官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

恥辱の通過儀礼(2)

― マインドコントロール ―



 この時代、携帯電話はまだ普及していない。康子が次の土曜日の羞恥練習を特別クラスのメンバーに告げた夜、祐一は美子が帰り着いた頃合いを狙って、彼女の自宅に電話を掛けた。

「はい、椎名です」
 女の一人暮らしなのに名乗ってしまうのが、いかにも美子らしい。
「祐一です。こんばんは」
「あ・・・こんばんは」

 誰からの電話かわかって、一瞬だけ安心と喜びで声が弾んだ。しかし、祐一が超薄レオタードで踊る練習に立ち会うという件を思い出したのか、電話の向こうで身構える様子が伝わってくる。

「次の土曜にする練習だけど・・・何と言っていいものか・・・」
「私、まだ信じられないんですけど、本当にするんでしょうか?」
「うん、やるって言ってる。去年も、ちょうどこの時期にしたんだ。母にとっては、愛弟子を見つけ出すためのテストでもあるしね」

 先生である康子を「母」と呼ぶことで、君は特別だというメッセージを送る。これも祐一にとっては、作戦の一端だ。また、言葉の端々に、あれは康子がさせていることで、自分は積極的に関わっていないと匂わせてもいる。

「やっぱり、ぼくに見られるのがいや?」
「だって・・・それは、男の人に見せるような姿じゃないから・・・」
「ぼくがそんな目で、あなたの踊りを見ると思ってるの?」
 少し気色ばんでみせる。そして、論点を意識的にズラしてゆく。

「いえ、そういうんじゃないけど・・・」
「ぼくはミーコさんの踊ってる姿、とてもきれいだと思うよ」
「そんなこと・・・私って、足が太いし、胸だってそんなに・・・」
 電話の向こうの、自信なさげな表情が目に浮かぶ。

「ぼくはミーコさんのプロポーション、素敵だと思うけどな」
「あー、やっぱり、そういう目で見てるじゃないですか」
 そう言いつつ、美子も本気で怒っている訳じゃない。それは、甘えの混じった声の調子からわかる。

「だって、ぼくにとってあなたは特別だもの」
 歯が浮くような科白。それを、祐一は自然に口にする。唐突にだとお笑いになってしまうが、言ってもおかしくない流れを作り、生真面目なキャラをアピールしておくことが肝心だ。

「好きなんだ・・・。それでも恥ずかしい?」
「・・・だからこそ、余計に恥ずかしいの・・・」
 愛される歓びを心から噛み締める ―― そんな美子の感情が声から滲み出している。

「じゃ、思い切って練習しませんか、二人だけで。あ、断じて嫌らしい気持ちで言ってるわけじゃないからね」
「・・・練習・・・ですか。でも、どうやって?」

「平日の午前中とか、スタジオは空いてるはずだから、頼めば使わせてもらえるはずですよ。ぼくが母に言えば、より確実かな」
 単なる思いつきではなく、当初からの予定に沿った提案だ。

 そう、ここまでのすべては、祐一が書いたシナリオに沿って動いている。最初の出会いも、美子をアパートから尾けて、本屋に入っている間に彼女の傘を近くの路地に捨てた。運命のめぐり合いを演出するための、周到な作為というわけだ。

「え、でも仕事があるし・・・」
「この際、休んじゃいましょう、会社。来週の土曜日は、ミーコさんにとってすごく重要だと思う。恥かしさで体が縮こまっていると、母は評価しないから。去年が、そうだったんです」

「・・・でも・・・」
「ぼくもつき合いますよ。というか、ぼくの視線に慣れることが一番大事でしょう。絶対に変な目で見たりしないと、約束しますから」
 祐一は、真摯な言葉で説得を続ける。心の中で、真っ赤な二枚舌を出しながら。

 特別クラスの練習は、水曜日の夜と土曜日の午前中にある。今日は水曜で、母・康子が例のレオタードで踊る練習をすると言ったのが、来週の土曜日。ちょうど十日後にあたる。

「来週の月曜はどうです? あの日も午前中は、何も入ってなかったはず。ぼくの方で母からカギを預かっておきますよ」
「え? 私、まだ決めたわけじゃ・・・」
「大丈夫。きっと何もかも上手く行きますよ、ミーコさん」

 ここが露出調教の最初の山場だけに、祐一としても力が入る。
「せっかく有給を取るんだから、午後からあそこに行きません? 平日なら割と空いてると思うし」
 祐一は、車で1時間ほど離れた所にある遊園地の名前を出した。

 大学の夏休みが、来週の後半から始まる。小中高は二十日過ぎからだ。月曜日はまだ、家族連れは少ないだろう。
「途中に美味いステーキハウスがあるんですよ。よし、ここはひとつ、昼飯はぼくが奢りましょう」

「そんな、私が学生の祐一さんに奢ってもらうなんて・・・」
「じゃ、こうしませんか。遊園地の入園料は出してください。それ以外の乗り物料金とかは、ぼくに任せて、ね。」
 休みを取るのは既に決まった事。そうした雰囲気を作ってしまう。

「母という人は踊りを見て、何を教えるかを決めるところがあって。だから、ここでアピールできないと、ミーコさんが憧れているあのダンスから、遠ざかっちゃうことになるかも」
 誉めるばかりでなく、そう言って脅しを掛けておく。




 特別クラスのダンサーの大半は準会員で、美子と同じ扱いだ。主宰者である康子をピラミッドの頂点として、ナンバー2の川中がソリスト(独演者)という、一段高い称号を与えられている。正会員は、先日昇格した矢口香奈ともう一人。

 川中は、もともとは別の団体にいたのを、康子が数年前に引き抜いて来た。三十代後半で、基本に忠実な安定したダンスを踊る。ダンサーとしてもだが、指導者としての能力も高い。美人でも不美人でもなく、何を考えているかわからない印象がある。

 康子が独特の指導方法を前面に出して来たのは、全国コンクールで優勝した一昨年の初め頃からだが、それについては特に意見を述べるようなこともない。康子を補佐するという立場をわきまえて、淡々と自分の役割を果たしている。

「矢口さんのように正会員に昇格したら、ソロで踊るチャンスも増えるはずだし、ミーコさんの目指す『人を魅せる踊り』にぐっと近づくんじゃないかな」
 結果次第でどちらの可能性もあると、祐一は巧みな対比で話す。

 正会員二人のうち香奈は、既に祐一の命令を受け入れ、露出の快楽に溺れ始めている。もう一人の中原という女性は、痩せた少年のような体つきだった。踊りは上手いし、羞恥レッスンも一応こなしたが、祐一にとっては調教の対象ではない。

「ね、練習しとこう。ぼく、出来るだけ協力しますから」
「・・・はい・・・」
 泣きそうな声。本当に純だ。だからこそ嬲り甲斐もあるのだが。 「じゃ、10時にスタジオで。二人だけで肩ならししましょう」




 その週の土曜日の練習で、最初に目が合った時、祐一は美子を安心させるために、取っておきの笑顔を投げかけた。若い頃から遊び人だった父親。母方の親戚からは、神碕家の財産目的で母を篭絡したと言われる、その父譲りのキラー・スマイルだ。

 父は腕っこきのジゴロだったらしく、独身時代も定職を持たず、女に貢がせて食っていた。結婚は、自分にのぼせていた母を孕ませてしまった、いわゆるできちゃった結婚だったと聞く。その時、母の胎内にいたのが祐一だ。

 もともとが放浪癖のある男だったし、結婚後もずっと浮気相手が、時には複数いたらしい。それは、何となく子どもの祐一にもわかっていた。ふいっと出て行って、1週間ほど戻らないなんてのはいつものことだった。

 彼が父親の姿を最後に見たのが、中学2年の夏。いつものようにふいと出たきり、二度と帰って来なかった。すぐ帰ってくるだろうと思っていたが、ずっと待ちぼうけ。どうやらその少し前に、夫婦間で決定的ないさかいがあったらしい。

 母の実家は、まずまずの財産家で、祖父母は既に他界し、代替わりしている。ミューズのスタジオがある8階建てのテナントビルも、母の兄 ―― 祐一にとっては伯父 ―― の持ち物だし、母子で住んでいる一軒家も、相続した財産の一部で建てたものだ。

 ダンス教室や舞踏家集団という、採算を合わせるのがかなり難しい分野に、康子がずっと集中して来れたのには、そういう背景がある。また、母子家庭なのに、一人息子に外車を買ってやれるのも、同じ理由からだ。

 父がいなくなって、しばらくの間、母は抜け殻のようだった。残された父の持ち物は、当時に住んでいた借家から今の家に引っ越す時にも、すべて持って来た。定職を持たず、女遊びに明け暮れていた父を、母はそれでも愛していたのだろう。

 祐一は思う。母は馬鹿だ。いや、女という生物そのものが馬鹿なのかもしれない。愛する男の好き勝手な生き方に振り回されて、傷つけられる事を運命と受け入れるしか能がない。

 でも、自分は違う。男だし、傷つきたくない。だから、人を動かす力を身につけたんだ。魅力のある人間、力のある人間、頭のいい人間は、他人を自由に操って、何をしても許されるのだから。

 俺は、抱きたい女を抱くし、嬲りたい女たちを嬲る。ただ、それを暴力でなく、相手の精神を支配することで実現する。それが祐一の信条であり、信念だ。蟻地獄のように罠を張って、獲物が自分で転げ落ちてくるのを待つ。




 その日の練習後に、新人の高橋と保田の二人が、極薄レオタードでの練習はしないと、オフィスにいた康子に告げに来た。
「先生。申し訳ありませんが、私たちはあの服では踊れません」
「そうです。いくら何でも非常識すぎます」

 その言葉に、康子は薄く笑った。
「そうでしょうね。あなたたちの感じ方が、世間の常識だと思うわ。でもね、周りと同じ事をしていても、突き抜けた踊りはできない」

 背筋を伸ばして椅子に腰掛け、二人の生徒を正面から見据える。
「常識を超えるところに、神への道はあるのだけれど・・・理解してもらえないようね。すぐに特別クラスから降格させはしないけど、いい役をあげられなくなる。それでもやめる?」

 二人は、顔を見合わせてから、こくんとうなずいた。
「そう、わかったわ。結局、去年挑んだのは四人。で、まともに踊れたのが、矢口さんと中原さんだけだった。彼女たちは羞恥を楽しむ境地に達した。だから、正会員になってもらったの」

 康子の視線が厳しくなる。二人はうつむいて聞いている。
「選択は個人の自由。だけど、この練習の事は絶対に言わないでね。外部にはもちろん、指導している生徒さんにも。もし漏らすようなことがあれば、私にも考えがあるから」

 声にこもった威圧感に、彼女らの動揺がいや増す。
「自分の限界に挑戦しない人は、来週の土曜日は来なくていいです。続ける気があるなら、その次からいらっしゃい。いいわね」

 二人は緊張と屈辱に震えながらも、どこか安堵した声で「はい」と答え、逃げるように事務室を出て行った。




「ミーコさん、おはようございます」
 午前十時。美子は、スタジオの前で祐一を待っていた。ジーンズに白いノースリーブのカットソー。硬い表情を浮かべている彼女に、祐一は屈託のない調子で、廊下の端から手を振る。

「緊張してる?」
「すごく。・・・だから、やっぱりよそうかと思ってて・・・」
「いま緊張しておけば、本番でリラックスできるんだから。カギを開けるんで、ちょっと横に寄ってください」

 ここまで来て、尚もためらっている美子の顔を、祐一の深い鳶色の目がじっと見つめる。
「くどいようですが、いやらしい気持ちじゃないですから。こうして慣らしておく事が、あなた自身のためなんだ。いいですね」

 言葉とは裏腹に、祐一の心の中は鬼畜な考えでいっぱいだ。それを気づかれないように注意をしつつ、温かく聞こえる口調で念を押すと、美子はやっと納得して更衣室に向かってくれた。まったく手間暇かけさせやがる。

 祐一はスタジオに入ると、淀んだ空気を入れ換えるために、窓を次々と開け放った。近くにそれほど高い建物がないため、外から覗かれる心配はない。もちろん、窓際に立てば別だが。

 夏の薄みどり色の風が、ゆるやかに吹き込んでくる。祐一は、ショルダーバッグからビデオカメラを取り出し、バスタオルにくるんで壁際の椅子の上に置いた。美子の緊張がほぐれて来たら、しっかり撮影してやるつもりだ。

 数分のち、窓の外を見ていた祐一の後ろで、ドアが開く音がした。振り向くと、バスタオルを肩から掛けて、体の前面を隠した美子が立っている。恥じらいに頬を染めて、うつむいた表情に、祐一は素でドキッとしてしまった。

 あんなに体を硬くして、珍しいくらいうぶで可愛い女だ。
「じゃ、音楽、始めます」
 スタジオの奥にあるコンポに近づき、棚から取り出したテープを再生する。美子を入れた5人が踊る予定のアップテンポの曲だ。

 美子は、心配そうに窓の外をちらちらと見ている。
「外からは見えないからね。ほら、踊らないと練習にならないよ」
 祐一のその言葉に、美子は彼の方を見て、すぐまた目を逸らす。部屋の奥の椅子の上にバスタオルを置き、中央に出てくる。

 こちらに向き直った彼女の両手が、さりげなく股間と胸元を隠すように添えられる。瞳が心持ち潤んで、祐一の視線を意識するのか、しきりと両方の脚を、ひざの辺りでこすり合わせている。

「ミーコさん、とってもきれいだよ。だから、もっと自然にして」
 そう声を掛けつつ、彼は何気ない動作で入口のドアに近づいた。母と事務員の女性には、ここを使うと言ってある。カギは自分が持っている。邪魔が入らないように、ノブのボタンを押してロックする。

 同じ振りを二回目、三回目と繰り返すうちに、最初はすぐに胸や恥丘の辺りに行こうとしていた手が、自然に動き始めた。振り付け通りに、ダイナミックな動きや大胆な開脚ができるようになってゆく。しかし、まだ表情は硬く、伸びやかという表現には程遠い。

「うーん、どうしても動きが硬いなぁ。素人のぼくでもわかる」
 祐一が、曲を一旦止めた。美子はすぐにバスタオルを取りに行き、露出した肌を隠そうとする。そして、股間に食い込んだ股布を、指をレオタの内側に入れて素早く延ばした。

 祐一は、大股で彼女の側に歩み寄った。不出来だという自覚があるのだろう。不安に満ちた二つの目が見上げて来る。
「まず、リラックスしよう。この前、一緒にイメージトレーニングしたでしょ? あの感じで、ぼくの目をまっすぐに見て」

「そう、気持ちを楽にして、ぼくの目を見て。他の音は聞こえなくなる。ほら、まぶたが重くなる・・・。目がすっかり閉じてしまう」
 美子は、立ったままだ。バスタオルの端を押さえていた指の力が抜け、体が微妙にゆらゆらと揺れ始める。

「ほうら、あなたは、深い森の中に分け入ってゆく。そこはとても居心地がいい。気持ちのいい風が吹いている。木漏れ日の射す、柔らかい苔の生えた地面に、あなたは腰を下ろす」
 美子は目を閉じたままで、床の上にお姉さん座りをした。




 催眠術 ―― そんなものは、ショー用のやらせだと思っている人も多い。一方で、相手に何でも言うことを聞かせる魔法のようなものだと信じている人たちもいる。だが、実像はその中間くらいにあると言っていいのではないだろうか。

 専門家は「術」なしの「催眠」と呼ぶのが普通だが、ごく簡単に言えば、相手をトランス状態、つまりある種の精神集中状態にして、様々な暗示を与えることを指す。その暗示によって、何かができなくなったり、逆に無意識にしてしまったりもする。

 しかし、どんな暗示でも有効なわけではない。本人が潜在意識で望んでいない暗示は、効果がないと言われている。例えば、催眠状態の女性に「人前で裸になれ」と命じても、そうはならない。それは女としてふしだらな行為であり、したくないと感じるているからだ。

 もしその女性が裸になるとしたら、本人が深層心理ではそれを望んでいるか、少なくとも「なってもいい」くらいには感じている必要がある。つまり、相手を催眠状態に導きさえすれば、暗示によって好きなことができるわけではないのだ。




 祐一が美子をトランス状態に導くのは、これが初めてではない。何度目かのデートで、最初の時に入った地下の喫茶店の、奥の席でその状態に持ち込んだ。そのテーブルは、植木や通路で他から隔てられていて、常連の間では「VIP席」と呼ばれていた。

 その喫茶店の雇われマスターと、祐一は個人的に親しい。女をこます時に、場所の提供などで協力してもらう代わりに、落とした獲物を楽しんでもらうこともある。祐一はデートの途中で電話をして、その席を予約しておいた。

 祐一の催眠誘導のやり方は、相手が話したい事を熱心に聞いてやる姿勢と、会話の中に適切なキーワードを挿し込むことで、気づかれないようにトランス状態に誘うものだ。いかにも催眠術然とした口上は必要ない。

 大きく「現代催眠」に分類されるものだが、独自の要素も取り入れている。つけているオーデコロンは、龍涎香、白檀、乳香を少量混入させたもので、集中を高める効果がある。しかし、誰にでも掛かるわけではなく、信頼関係があってこそスムーズに事が運ぶ。

 女性は総じて、信じている相手の言葉なら、個々の内容を吟味せずに受け入れてしまうところがある。ましてや、傘をなくして困っている自分を、「運命的な出会い」で助けてくれた男性の言葉なら、無条件で従って不思議ではない。

 美子の最大の関心はダンスだ。これは間違いない。祐一は、適切な質問からダンスに関する経験、想い、記憶に残る出来事を彼女に語らせ、意識をそこに惹きつけた。それは、快さを生むだけでなく、信頼感を深める上でも有効に働く。

 一方で、母・神碕康子の踊りが、いわゆるトランス状態を上手く利用したものだと明かした。そして、努めて気軽な調子で、
「ここで、ちょっとだけ体験してみようか」
と持ち掛けて、軽いトランス状態に誘導した。

 祐一は、催眠だけで美子をモノにしようとは考えていない。催眠には自ずと限界がある。だから、彼女自身が恥かしい事と知りながら、自分の意思で体を晒してゆくように仕向けたい。恥かしいのは、自分自身の淫らな心だと気づかせてやりたい。

 ステージでダンスを踊りたいと思う人間は、程度の差こそあれ、みな目立ちたがり屋だし、見られる事を嬉しいと感じている。心の中に元々ある「注目を浴びる快感」を強めてやるツールの一つとして、催眠を効果的に使おうというスタンスだ。

 初回の催眠で祐一がしたのは、できるだけトランスを深めておくことだ。こうしておくと道がついたようなもので、次の機会に催眠に入りやすくまる。また、実験も兼ねて暗示をひとつ与えておいた。

「私が、あなたのダンスをビデオ撮影しています。それに気づいて約10分すると、あなたはとても淫らな気持ちになります。着ている服を脱いで、私に裸を見せたくなります。そして、抱いて欲しいと感じます。でも、とても恥かしい事だから、実際にはしません」

 先ほど言ったような理由から、例え「脱げ」と暗示を掛けたとしても、美子が実行することはない。だが、皆の注目を浴びるのが歓びで、祐一に好意を持ち始めているはずの彼女が、そうしたいと「思う」のは十分にあることだ。

 暗示を受けた事を忘れさせる暗示(これを健忘暗示と呼ぶ)を掛け、暗示自体はそのままにした。先日の練習で、美子が見た淫らなイメージは、残しておいた暗示の効果だ。あの時、美子の頬は羞恥に赤く染まり、無意識に太ももをこすり合わせる動きをしていた。

 最早、女は罠に掛かってしまっている。後は、蟻地獄の巣に進んで落ちるうように、軽く背中を押してやるだけだ。何度も自分の淫乱さを実感する体験を積めば、そのうちに恥じらいながらも、喜んで己れの恥部をさらけ出すようになるだろう。




「あなたは、ゆったりとくつろいでいる。何も怖れることはない。森を抜けると、寄せては返す潮騒の音が聞こえて来る。あなたはどんどん安らかな気持ちになる・・・」
 祐一はいつもより低い声で、緩やかに話し掛ける。

「あなたは伸びやかに踊れる。踊ることが楽しくて仕方がない。自分の姿をいつものようにビデオに撮って欲しいと思う。そして・・・」
 次の暗示を印象づけるために、祐一は少し間を取った。

「カメラが回り始めて10分くらい経つと、これもいつものように、とても淫らな気持ちになる。着ている服を脱いで、裸を見てもらいたくなる。でも、それは恥かしい事だから、淑やかなあなたは我慢する」
 残酷で皮肉な笑みが、祐一の片頬に浮かぶ。

「でも、素直な気持ちは、裸の自分を見て欲しい。大好きな男性に、抱いてもらいたい。そうですね」
「・・・はい・・・そうです・・・」
 のろのろとした口調で、美子が答える。

「あなたは男性に踊る姿を見られるたびに、どんどん自分の気持ちに素直になってゆきます。あなたの望みはなんですか?」
「・・・裸を、見てもらうこと・・・抱いて・・・もらうこと・・・」
 抑揚のない声音だが、言葉ははっきりと聞き取れる。

「では、三つ数えると、あなたは目覚める。そして、いま私が言ったことを忘れてしまう。楽しくゆったりと踊る自分のイメージだけが残る。1・2、意識が次第にはっきりしてくる・・・3!」




 美子が目を開いた。先ほどまでとは違い、表情に余裕がある。
「もう、大丈夫。ミーコさんは、きっと自分らしく踊れる」
「とても落ち着けました。祐一さん、ありがとうございます」
 コンポに歩み寄り、止めておいた音楽をスタートさせる。

 明らかに、先ほどとは踊りが変っていた。体のこなしやポーズの決め方にためらいがない。しかし、美子が恥じらいをなくしていないのは、その伏し目がちな視線からよくわかる。
「ビデオ、撮っときます。後でフォームのチェックができるように」

「はい、お願いします」
 息を切らせながら、素直にそう答える美子。祐一は、その肢体にレンズを向けた。ファインダー越しに、小ぶりな乳房が揺れ、股間にサポーター・ショーツがくっきりと浮かび上がっている。

 やれやれ、やっと踊る気になってくれたか。色事に縁のなさそうなこの女が、10分後にどう変るかが楽しみだ。まだ俺は、キスさえしていないんだ。淫らで恥かしいおねだりを、これから山ほどさせてやるよ・・・。祐一は、小声でそう呟いた。




 カギの掛かったスタジオに、恋人と信じる祐一と二人きり。美子は、陵辱のシナリオ通り、罠に落ちてしまうのか? この続きは「恥辱の通過儀礼(3)」でお楽しみください。

 尚、この時に撮られたシーン(の一部)は、「夫婦の寝室」の「淡色のレオダード」で私が見つけたビデオに入っていたものです。




このストーリーはフィクションです。登場する団体、人物等は架空のものであり、実在のものとは一切関係ありません。のぞき、盗撮は犯罪です。絶対に真似をしないでください。