官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

風を待つ渚(1)

― 真昼の人妻淫語調教 ―



「・・・っあぁ・・・ぁふぅん・・・あぁん・・・あん」
 カーテンをぴったりと締め切り、外からの視線を遮った真昼のリビングに、甘えかかるような女の声が響く。
「やっぱりこんな風にされるのが、好きだったんだね、奥さん」

 窓を背にして置かれた革張りのソファに、女がひとり座っている。いや、正しくは座らされていると言うべきか。彼女が身にまとっているのは、薄紫のビキニショーツと麻縄だけ。正面には幅広の姿見が据えられ、女に自分の姿が見えるようにしてある。

 M字開脚の形に、大きく広げられた下肢。太ももに幾重にも巻かれた縄は、女の首の後ろを通す形で、もう片方の太ももに結わえつけられている。縄が緩みなく張られているため、女はいくら恥ずかしくても、自力で脚を閉じることはできない。

「だけど、自宅で縛ってくれと、奥さんの方から言い出すとはね」
 ソファの傍に立っている男は、女とは対照的に着衣のままだ。歳の頃は二十代半ば。女性に人気がありそうな端正な顔立ちだが、崩れた感じはなく、誠実な好青年という印象を受ける。

 たわわな乳房の上下を締めつける縄は、鈍い飴色をしている。おそらく青年の持ち物なのだろう。よく使い込まれている。縛った女の汗や涙や唾液だけでなく、粘り気に満ちた淫水を長い時間掛けて吸い込まなくては、こんな良い色にはならない。

「どうして欲しいの、奥さん? 望美ちゃんが帰ってくるまでにはたっぷり時間があるし、今日は奥さんが望む通りの事をしてあげるよ」
 青年の口調は優しい。だが、その視線には、どこまで女の性が溶け出しているか、冷静に測っているようなところが見え隠れする。

「あぁ・・・意地悪しないで、ちょうだい・・・早くぅ!」
 男はすぐ傍に立っている。上半身を捻って、ズボンに頬を擦りつけてねだる仕草が、淫らさに満ちている。そろそろ四十歳になろうという熟女だが、目鼻立ち、そして体つきは十分に若々しく美しい。

「何が欲しいの? ちゃんと言ってごらんよ」
「そんな・・・こと・・・言えない。でも、欲しいの・・・お願いよぉ」
 唾液の垂れた唇の端から、女の赤い舌がちらりと覗いた。
「じゃ、このままでお預け。ビール、飲もっかな。時間は十分あるし」

 青年はリビングを横切り、勝手知ったるという感じで、仕切りの向こう側のダイニングキッチンに消えてゆく。
「ぁはぁん・・・お願い・・・もう我慢できないのぉ・・・」
 女の声に混ざる吐息が、どんどんやるせない響きを帯びてくる。

「言っちゃえば、楽になるって。奥さん、淫乱のくせに照れてちゃダメでしょう。どうして欲しいか、はっきり言わないと」
 プルトップを開けた500ml缶を飲みながら、男が戻って来た。鏡の向きを微調整してから、今度はソファの前の床に腰を下ろす。

「いつもこんな派手なショーツなの? スケスケで嫌らしいなぁ」
 男の指先が、内ももの皮膚に触れてくる。女は体全体が色白な上に、内股のつけ根に近づくに従って、透き通るような輝きを増してゆく。その白さに、ショーツの紫が実によく映える。

 ふっくらとした恥丘を包み込む部分は、同じ紫のレースになっていて、粗い編み目の向こうに黒い草むらが仄かに透けて見える。その部分を覗き込みながら、青年は意地悪く鼻をひくつかせた。
「今日は、いつもより匂いがキツくない? 奥さんのここ」

「・・・いやぁん・・・そんな匂いなんか、嗅がないで・・・ぅうっ」
 男の舌が、内股をゆるやかに這い始める。思わずあえぎ声が漏れた。指先がショーツの縁をなぞり、尻穴に向けて細くなった股布を、少しずつ女体の中心に向けて両側からめくってゆく。

「ほら、横からもはみ出して来た。綺麗な顔に似合わず、しっかり生やしちゃって。ん? 濡れて来たんじゃないか、この真中のところ」
 じわじわと広がる愛液のシミが、高級な絹の下着を汚してゆく。
「・・・あっ、あうぅ・・・見ないで、お願い・・・」

 美しくウェーブのかかった栗色のセミロングが、切なげに打ち振られる。女の吐く息が、殊更に熱っぽくなってゆく。
「ちゃんと言ってごらんったら。何が欲しいの?」
 男の爪が布地の上から、陰核のありかを意地悪く探り当てた。

「・・・ほ、欲しいのよぉ。あなたの・・・あなたのオ○ンチン・・・」
 やっとの思いで口にしたその言葉。女の頬は屈辱の朱に染まり、息遣いはますます荒く、切羽詰って来ている。男は、ついと立ち上がり、ズボンのチャックを下ろした。

「そんな可愛い呼び方だったっけ? ちゃんと言ってくれなきゃ」
 顔の真横に近づいて来た男の股間。その気配に、女は首を捻って唇を寄せる。社会の窓から、すぼめた唇を強引に突っ込もうとする彼女の動きを察知して、男の腰が意地悪く遠ざかる。

「あぁん・・・そこまで女の私に言わせるの? お願い・・・」
「大人のは違う呼び方があるだろ? ほら、はっきり言ってごらん」
 男の細い指が、ショーツ越しに淫欲の源泉をゆるゆるとなぞる。
「あっ・・・あぁっ・・・おチ○ポ、下さい・・・な、舐めたいのぉ」

 青年は満足げに軽くうなずき、望みのものを取り出した。既に勃起しているそれは、彼の爽やかな風貌に似合わず、黒光りしている。
「あぅ・・・うぐぅ・・・んぐっ・・・」
 亀頭をひと舐めしてから、女はのどの奥まで怒張を呑み込んだ。




 女の名は、麻生由布子。専業主婦である彼女は、平日の昼には特別な用事がない限り、自宅にいることが多い。壁の時計は、午後1時を指している。ひとり娘の望美が学校から帰ってくるのは5時頃だ。そして、夫の帰宅はたいてい深夜になる。

 大手の建設機械メーカーの広報部長を務める夫・宏之とは、見合い結婚だった。由布子は東北の山あいの町の出身で、素封家というほどではないが、割合に裕福な家に育った。代々の家長が町長を務めるなど地方の名士で、由布子の実家は一族の本家にあたる。

 見合いの直接のきっかけは、祖父同士が先の戦で同じ連隊に所属し、旧知の間柄であったことだった。年齢的にも階級的にも宏之の祖父がかなり上だったが、郷里が近いということに加えて性格面でも馬が合い、戦後もつき合いが続いていたらしい。

 東京在住で多忙極まる宏之と、地元の県庁に就職していた由布子。二人の初顔合わせは、宏之の実家がある市の高級料亭で、型通りに行われた。振袖を着て座卓の向こうで伏目がちにしていた彼女を見て、『この人しかいない』と確信したのだと言う。

 彼女もまた、十歳年上にあたる宏之の紳士的な話し方と、話題の豊富さ、同年代の男性にはない細やかな気遣いに惹かれていった。この人なら、たしなみと節度を保った、誰に対しても恥ずかしくない理想の家庭を築いてくれるだろう。由布子はそう感じたのだ。

 結婚式は、宏之の地元の歴史のある神社で行われた。白無垢に身を包んだ由布子は、処女だった。華やかな披露宴、ヨーロッパへの新婚旅行。童貞でこそなかったが、宏之も女性経験が浅かった。初夜、不慣れな二人は何とか夫婦の契りを交わした。

 結婚後も、宏之の優しさは変わらなかった。性生活においても、決して無理強いをして来ることはなく、むしろ女性に淫らな要求をするのを、恥だと感じているようですらあった。そうして、安定した夫婦の関係は続いていた。そう、ほんの2ヶ月前までは。




「これが欲しかったんだろ。遠慮せずに、奥まで呑み込みなよ」
 ソファの脇で、若い男が腰をぐいと突き出した。黒ずんだ男根が、由布子の小さな唇に吸い込まれてゆく。苦しげに眉根を寄せ、口の粘膜を密着させようと、頬をすぼませる姿がいじらしい。

「・・・うぅん・・・んふぅ・・・ぅぐっ・・・」
 のど奥を貫く男のストロークが、次第に大きくなってゆく。
「鏡を見てみろよ、奥さん。マジでいやらしい格好だ」
 男のからかいに素直に応え、由布子は横目で鏡を見やる。

 鏡の中の女は、由布子自身も少し前まで知らなかった、もう一人の自分だ。後ろ手に縛られ、両脚をしどけなく広げた姿勢に縄掛けされて、ビキニショーツの股布を淫らに濡らす人妻。こんな女が、自分の内に眠っているなどと、想像したこともなかったのに。

 最初は、おぞましい変態行為としか思えなかった緊縛。それが今では、縄の感触を肌のどこかに感じるだけで、淫欲が燃え上がる。下腹の奥から、妖しい痺れが全身に広がる。手足の自由を奪われ嬲られることが、こんなにも女の性を蕩けさせるものだったとは。

「奥さんの口、すげぇ気持ちいい。次は、キ○タマを舐めてくれよ」
 男は、ズボンとトランクスを素早く脱いだ。反り返ったペニスに指を添え、その下に垂れた毛むくじゃらの睾丸をふたつ、由布子の鼻先に突きつける。

 その不躾な要求に応え、嬉々として玉袋にむしゃぶりつく由布子。たっぷりと唾液を含んだ柔らかい舌が、皺のひとつひとつを舐め広げるように這い回る。男の陰毛が鼻の穴に入りそうになることも厭わず、睾丸を交互に口に含み、くちゅくちゅと淫らな音をさせる。

「旦那さんにも、こんな風に玉舐めしてあげてるの?」
 ポロシャツを脱ぎ、上半身も裸になりながら、男が尋ねてきた。
「・・・ぁあん・・・お願い・・・あの人のことは言わないでぇ・・・」
 縄責めの悦びを知った今では、夫に対する負い目は殊更に大きい。

「ダメだよ。ちゃんと話しな。旦那とはどんなセックスしてるの?」
 上下から縄で締めつけられ、いびつに飛び出した裸の乳房。頂上の可憐な小梅を、男の指が捻じ切るように揉みにじる。
「あぁっ・・・いっ、言いますから・・・夫とはごく普通の・・・」

 男が上半身を傾け、由布子の無防備な陰部に指を伸ばして来た。股布に滲んだ淫欲の証しは、さっきよりも色濃くなっている。
「普通って言われても、よくわからないな。詳しく話してごらん」
 男の指が濃い恥毛を掻き分け、ショーツの内側に侵入してくる。

「は、裸で抱き合って・・・夫が、舐めてくれて・・・私が少しフェ、フェラチオしてあげて・・・それから、結ばれます」
 夫以外の男に嬲られながら、夫との性行為を克明に描写する。人妻にあるまじきその恥辱が、由布子の女を更に溶かしてゆく。

「結ばれる、か。奥さんらしい上品な表現だ。でも、わかりにくいな。何を、どこにどうするのか、具体的に言わないと」
 男の指がTバックの股布をぐいと引っ張り、尻のふくらみの外側に引っ掛けた。毛だらけの女陰が、男の視線に無防備に晒される。

 美白の内股に不似合いなほど濃い陰毛が、土手だけでなく女陰から肛門までを八の字に包むように、満遍なく生えている。縦長に透けて見える大陰唇は、口をつぐんではいるものの既に赤みを帯び、湧き出した淫汁が、飾り毛にべったりと付着している。

「お上品な話し方をする割には、すごい濡らしようだね」
 夫以外の男には触れさせたことのない牝穴に、指が深々と沈む。
「淫乱な奥さんにお似合いの、いやらしい言葉を使ってごらんよ。ホントは、はしたない言い方をするのが、気持ちいいんだろ?」

 本家のお嬢として箱入りに育てられた由布子は、淫らな物言いにはまったく縁がなかった。中学高校大学と女ばかりの環境で、友達もおくての少女ばかりだった。『フェラチオ』という言い方を知ってはいたが、まさか自分で口にするとは考えてもみなかった。

「・・・は、はい・・・夫の、ちん・・・いやぁ、やっぱりダメぇ」
 いやいやを繰り返す由布子。男はその横に腰を下ろし、彼女の体を横倒しにすると、いきり立つ股間を女の頬に押しつけた。
「大丈夫。きっと言えるよ、奥さんなら。ほら、がんばって」

 おのれの欲望を、暴力で満たそうとするのではない。子どもに自信を与え、やる気を起こさせる、教師やコーチのような接し方。この穏やかな声を聞いていると、自分が淫らな言葉を口にするのが当たり前なこと、正しいことのように思えてくる。

「硬くなった夫の・・・チ○ポを、私の、オ、オマ・・・○コに・・・」
 たしなみある女性には縁のない、性器の卑猥な呼び名。男に嬲られ、その言葉を口にすることで、体内を背徳の快感が突き抜ける。
「入れてもらうの・・・奥まで・・・締めつけてあげて・・・うぁぅ・・・」

 男の股間から香って来る、猛々しい牡の匂いに痺れつつ、由布子は濡れた舌を再び肉竿に這わせる。もっともっと舐めてあげたい。お嬢様育ちの彼女に起きた淫らな変化。そのすべては、夫がこの若い男を、家に連れて来たあの日から始まっていた。




「2年生になって、勉強が急に難しくなったって言ってたろう。来年は高校入試だし、すごく優秀な家庭教師がいるという噂を聞いてな、知り合いに紹介してもらったんだ」
 珍しく早く帰って来た夫が、夕食の席でそんな話を持ち出した。

「えー、家庭教師ぃ? いらないよ。私、自分でできるから」
 好物のカレーを頬張りながら、娘の望美が口を尖らせる。テニス部のレギュラーになれるかの瀬戸際で、勉強どころではないというのが最近の口癖だ。成績も確かに悪くはないが、トップクラスでもない。

「でもな、生徒をやる気にさせるのが、ホントに上手いらしいぞ。望美も楽しみながら成績がもっと良くなれば、ラッキーだろう」
「そりゃ、そうだけど。でも、部活あるから時間が合わなくない?」
 テニスに費やす時間を減らすつもりはないよ、というジャブだ。

「向こうにも都合があるだろうから、調整してみないとなぁ・・・」
「ねぇねぇ、そのカテキョって女の人? それとも男の人?」
 年頃の女の子らしく、望美はそうした事が気になるらしい。父親似のくっきりとした目鼻立ちが、好奇心にきらきらしている。

「男性だよ。それも学生じゃなくて、ちゃんとした仕事としてやってるらしい。だから、責任を持って一定の成果をだな・・・」
「男なんだー。カッコいいの、その人? それって大問題でしょ」
 中身もだけど、見た目も大事 ―― 望美はいつもよく言っている。

「それはわからんが、一度来てもらって会ってみたらどうだ」
 面談のたびに、代々の担任から『頭のいいお子さんですが、要は本人のやる気の問題です』と言われ続けている。その壁を何とか打ち破ろうという夫の提案に、由布子としても異存はなかった。




 親子で相談した数日後の土曜日に、彼はやって来た。
「初めまして、春木淳也です。よろしくお願いします」
 出迎えた家族三人に対して、そう名乗った男は玄関で丁寧にお辞儀をした。再び頭を上げた時に、由布子と目が合った。

「・・・あっ・・・」
 男の目が大きく見開かれ、口元からかすかに驚きの声が漏れたように見えた。怪訝な顔で見返すと、狼狽気味に目を逸らす。由布子以外の二人は、その表情に気づいた様子はなかった。

 リビングのソファで話し始めると、望美はすぐに彼を気に入ったようだ。春木は自分のPRだけでなく、学校やクラブ活動についても的確に質問してくる。偉ぶった様子も、ガリ勉を奨励する言動もない。
「勉強の面白さを実感してもらうのが、私の仕事だと思っています」

 優しく爽やかなのは、笑顔や姿かたちだけではない。声もそうだ。聞く者の心を和ませ、癒してくれる一方で、内なる活力を呼び覚ますかのような、ゆったりとした響き。彼が優秀な教師であることは、その話し方からも間違いないように思えた。

 春木は家庭教師事務所の所属ではなく、個人で仕事を受けているらしい。夫に彼を薦めたのは、望美の出産でお世話になった、産婦人科の院長先生とのこと。由布子は、白いあご鬚の温厚そうな風貌を思い出した。あの先生のご紹介なら、信頼できそうな気がする。

「しかも、春木君はウチの大学の後輩なんだよな」
「そうなんですよ。ぼくも驚きました。学部は違うけど、大先輩です」
 同期・同窓というのは、人の心の垣根を取り払うのに、とても効果的だ。望美も由布子も、すっかり彼に心を許し始めていた。

「私、テニスの練習は、どうしても休みたくないんです。今が勝負なんで。でも、それって大丈夫ですか?」
 望美は心配そうだったが、あらかじめ選んでおいたかのように、春木のスケジュールは望美の部活のない日が空いていた。

 こうして、彼は麻生家に出入りするようになった。それが、5月の連休明け。週2回、午後5時から午後9時まで、望美の部屋で英語と数学を教える。今どき珍しく真面目で、スレたところのない好青年 ―― 由布子の目には、春木はそういう男として映っていた。




「奥さんは、ぼくが中学の頃に亡くした母にそっくりなんです」
 望美への個人授業が始まって半月。初対面で見せた驚きの表情について、由布子が質問した時の答えがこれだ。

「あの時は、本当に心臓が止まるかと思いましたよ」
 驚きの表情を再現してみせて、春木は笑った。
「まぁ、そんなに早くにお亡くなりに・・・。それはお気の毒に」
「父も、ぼくの大学入学の年に癌で死にました。兄弟もいませんし」

 春木は几帳面な性格らしく、定刻より早めに来て望美の帰りを待つのが常で、その間は由布子が話し相手になった。最初は望美の成績や最近の受験問題の傾向について等、堅苦しい話題がばかりだったが、次第に打ち解けて、個人的な事も話し始めていた。

「ご両親ともなのね。それは、本当に何と申し上げていいか。ごめんなさいね、変な事を聞いてしまって」
「いえ、気になさらないで下さい。もう昔のことですし」
 何でもない事のように話されると、却ってせつなさが募る。

「母は、結核でした。普通は滅多に死なないらしいけど、もともと体が弱く、合併症を起こしてしまって。発病してからは、ずっと長野のサナトリウムに入っていました。約2ヶ月に一度、父と訪ねて行くんですが、伝染しちゃいけないと、母の体に触れることも許されなくて・・・」

 淡々とした様子が、彼が過去に経験した、そして現在も身を置いている寂しさを物語っているように思えた。幽かに憂いを含んだ透明感のある声は、知らず知らず相手を話の中に引き込んでゆく。
「本当にお気の毒で・・・お母様は、どんな方だったのかしら?」

「元気な頃は、近所で評判の美人だったと、父が言ってました」
 その人に似ているなら、私も美しいと言ってもらえるかしら? 春木に対する同情とは別に、そんな思いが頭をふとよぎった。
「先生も早くいいお相手を見つけて、ご自分の家庭を築かなくっちゃ」

「いやぁ、まだ早いですよ、この歳で結婚なんて」
 励ましの言葉が型通りすぎたのか、春木は寂しく微笑み返す。
「じゃあ、先生はどんな女性が理想でいらっしゃるのかしら?」
 男の気持ちを引き立たせようと、由布子は明るくそう尋ねてみた。

「どうか、笑わないで下さいね。ぼくは・・・奥さんみたいな人に惹かれるんです。優しくて綺麗で、すべて受け止めてくれそうで」
 意を決したという様子で、春木はそう答えた。由布子は、こんな答えを無意識に期待していた自分に気づいた。胸がきゅんと高鳴る。

「別人なのは、無論わかってます。嫌らしい意味じゃないですし。でも、あの時、触れることのできなかった母が目の前にいるようで」
 一転して淡い失望。女としてではないの? そうよね、こんなオバサン。だけど、女として見てほしい。ダメよ、夫がいるのに何を ――

 テーブルの向こうから見つめてくる男のまっすぐな視線に、由布子の想いは乱れる。何か話さなくてはと思うが、声にならない。
「・・・頬に触れてもいいですか? 奥さん・・・」
 透明感のある声が、由布子の耳に届く。その心地よさ。

 男の唐突な願い。許される事ではない。でも、女としてでないなら。 ―― 錯乱が深まる一方で、母性をくすぐられると言うのだろうか、感じたことのない甘美な陶酔が、由布子の心を熱くし始める。性的な意味合いはないのだから、指で頬に触るくらい・・・。

 しかし、それは自分への言い訳ではなかったか。指先が皮膚をなぞる。鼻腔をくすぐる石けんの残り香。頬からあご、そしてもう片方の頬へ、触れるか触れないの際どい感触がもたらす快さ。
「肌触りまで、母さんに似ている気がする・・・柔らかい・・・」

 意識しないうちに、由布子はうっとりと目を閉じていた。下半身のどこかが、熱を帯び始めている。不意に指が唇に触れてきた。娘の家庭教師に、私は何をしようとしているの ―― 意識では抗いながら、つい春木の指に舌を押しつけそうになっている自分。

「なんて柔らかい唇だろう。指先が蕩けてしまいそうだ・・・」
 遠慮がちに上下の唇を押し分けて、口腔に侵入してくる指。由布子は我慢できずに、舌を絡めてしまう。もう耳には、春木の声しか聞こえなくなっている。その不思議な響きが、ふっと遠ざかって・・・。

 意識が空白になった時間が、あったに違いない。あまりの快さに我を忘れ、気づいた時には指が男の舌に変わっていた。
「ああっ、私、どうしてこんな事を。い、いけません!」
 いつの間にか、由布子は上半身を抱きすくめられている。

「すぐに望美が帰って来ます。だから、今は許して」
 男に言い寄られるのは、お前に隙があるからです ―― 厳格だった祖母の言葉が思い出される。不貞は許されるものではない。しかし、それが思いがけず官能の火を点けられた、女の本心だった。

「困らせたいわけじゃないんです。ただ、あなたが好きだから・・・」
 再び唇が重ねられ、舌がもつれ合う。全身から力が抜けてゆく。
「・・・ぅうん・・・んぐぅ・・・の、望美がもう・・・」
 男に溺れてゆく感覚を、由布子は生まれて初めて味わっていた。




 それから2ヶ月足らずの間に、まるで未開発だった由布子の性感は、見事に開花していった。週2回、平日の昼間にラブホテルに呼び出され、裸に剥かれて抱かれる。夫の他に男を知らず、恋愛経験すらなかった由布子は、まさに春木のなすがままだった。

 真面目そうな外見と若さに似合わず、春木は性感のツボを心得ていた。最初はごく普通の交わり方だったが、何かの拍子に手をタオルで縛られて犯された。由布子がそれに興奮したと見るや、縄が持ち出され、拘束されてするセックスが当たり前になった。

 何度となく絶頂に押し上げられる中で、由布子は幼い頃に祖母や母が植えつけた、自己イメージの嘘に気づいていった。お行儀のいい子、決して間違いを起こさない娘 ―― でも、私は何も感じない人形なんかじゃない。愛撫と辱めで悦びを感じる、ごく普通の女なの。

 箱入り娘として、性的な情報から隔絶されて育った由布子にとって、すべてが初体験だった。春木の縄扱いは実に巧みで、その指使いは的確に快楽の源を探り出してゆく。彼に抱かれるたび、古い皮膚を脱ぎ捨てるように、由布子は『女』になっていった。




「ああっ・・・もう入れてぇ。欲しい、欲しいのぉ・・・」
 おのれの股ぐらをばっくりと開げられながら、男の股間をくまなく舐め回す。裏筋に舌を這わせ、玉袋を吸い、肉棒を根元まで飲み込む。鏡に向かって剥き出しにされた女陰を、男の指が深くえぐる。

「じゃ、そろそろかな。奥さん、おねだりできるよね」
 プレイ前に引いたルージュが、唾液で溶け出している。
「もう許して・・・どうしてそんな事ばかり、言わせるようとするの?」
「嫌ならいいんだよ。帰ってきた望美ちゃんに、縄を解いてもらえよ」

 怒張を唇から引き離し、春木は帰ろうとする素振りを見せる。
「あぁん・・・そ、そんな恐ろしいこと・・・。ううっ・・・言います・・・チ、チ○ポを、私の、オマ、オ○ンコに入れて・・・ください」
「どうして欲しいって? 教えたのは、そんな言い方じゃないだろ?」

 春木の細い指が、恥毛の中の陰核を探り出し、こね回す。
「あぁっ・・・ぶ、ぶっといチ○ポを、私のオ○ンコに、ぶち込んで!」
 あまりにも卑猥なおねだり。由布子の体が打ち震える。そして、その恥辱が歪んだ快感に昇華し、新たな花蜜を股間に宿らせる。

 男の腕が両ひざの裏を持って、女体を抱き上げた。幼女の頃、おしっこがしたくなると、誰かが後ろから持ち上げてくれたあの姿勢。反り返った肉棒の上に、由布子の女穴がゆっくりと降りてゆく。
「よく言えたね、奥さん。ご褒美を思う存分、楽しみな」

「ああっ・・・いいぃ・・・凄い! あなたのって凄くいいっ」
 正面の姿見には、手も脚も厳しく緊縛され、あられもない姿で嬲られ続ける女の体。肉ひだに食い込む肉棒の卑猥な動き、そして鼻を突く若い牡の体臭が、由布子をとめどなく狂わせてゆく。

 こんな変態じみた交わりで、感じてしまうなんて。自分自身も知らなかった女としての業の深さに、彼女は改めて戦慄する。しかし、その感慨も長くは続かない。縄の感触がすべてを呑みこみ、熟した女の官能を溶かしてゆく。戻れない。溺れ、狂ってゆくだけ。

 キィ ―― その時、リビングの入り口の扉が、幽かに開いた。少し距離があるため、快感を貪るのに夢中な二人は気づかない。家の中に誰かがいる。侵入者の目が、廊下の暗がりから、二人の狂態をじっと見つめていた。




 自宅での危険な緊縛プレイに耽る人妻・由布子と、娘の家庭教師である春木。その痴態を、覗き見ているのは誰? この続きは「風を待つ渚(2)」で、お楽しみください。




このストーリーはフィクションです。登場人物・団体等はすべて架空のものです。