官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

風を待つ渚(2)

― 望美・十四歳、大人への階段 ―



 その日の朝、望美は開校記念日なのを黙っておき、素知らぬ顔で家を出た。カバンには私服とスニーカー、そして帽子。駅前のデパートのトイレで着替えて、代わりに制服を収めたカバンを、駅のコインロッカーに入れる。時間を適当に潰してから、家に帰るつもりだ。

 母親の様子がいつも通りなら、こんなトリックが通じないことは、望美もわかっている。一年生だった去年も、同じ日が休みだったのだから。しかし、近頃の由布子は、すべてが上の空という感じで、望美が声を掛けても、ぼんやりとして物思いに耽っていることが多い。

 子どもに言えない心配事でもあるのだろうか。それにしては、やけに機嫌がよくて、現役の少女である望美以上に明るくはしゃぐ日もある。父親の寒いギャグはまるで変わらないのに、母親の方はまるで別人になったかのように、望美の目には見えるのだ。

 別人という意味では、望美自身もクラスやテニス部の仲間から、近ごろ輝いてるね、恋してるのとか言われる。春木への気持ちは、そういうのとは別物のつもりだが、教わる時に至近距離で見られると思うと、スキンケアも始めたし、服装に気を配るようにもなった。

 憧れに近い感情だという自覚はある。カッコよくて、声も素敵で、教え方も優しい先生。彼には、同級生の男の子たちにはない、大人の余裕が感じられる。共に過ごす時間を重ねるに連れて、望美の想いは深まってゆく。しかし、由布子は何も気づいた様子がない。

 友達の中に、一年程前に両親が離婚した子がいる。その子から聞いた話だと、最初の兆候はこんな変化だったとか。つまり、子どもへの無関心、情緒不安定な母親、自分のペースを変えない父親。そして、母親が頻繁に外で人に会うようになったこと。

 最後のは、望美にはよくわからない。ただ、部活のある日は、帰るのは8時近くになるが、由布子の方もまるでさっき帰って来たという感じで、何も家事をしてなかったりする。カルチャーセンターの講座は、午後の早い時間のコマしか取っていない筈なのに。

 そういう意味では、いつだったか下着専用の乾燥機の中に干してあった、黒や紫のTバックショーツも怪しく思えてならない。予定より早く帰ってきた日に偶然見つけたのだが、どれも母がいつも着けている上品なものとはまるで違う、大胆なデザインだったのだ。

 どうにも気になったので、いけないとは知りつつ、望美は後からこっそり母の衣装棚を調べてみた。だが、その時の下着はなかった。
 別の場所に隠してあるのだろうか? それは、難しい年頃である娘への影響を考えてのことか? それとも、夫にも隠さなくてはならない理由があるのか? 望美には判断がつかなかった。

 諸々の気がかりが嵩じた結果の探偵活動。ちょうどいい時期に開校記念日があったのは、望美にとってラッキーだったが、なくても仮病を使って早退しようかとは考えていた。その場合は、担任から家に連絡が入ってしまうのをどうするか、それが問題ではあったのだが。




 午前中の外出はないだろう。そう読んで、望美は駅前で時間を潰すことにした。マンガ喫茶で読み始めた長編マンガにハマッてしまい、気がついたら午前11時になっていた。こんな事でターゲットを見失っては、余りに間抜けだ。彼女は急いで家に引き返した。

 自宅は住宅街の中の一戸建て。駅方面に向かう朝の通勤・通学ラッシュが過ぎると、辺りはすっかり静かになる。物干し台に洗濯物を干す主婦や、散歩から帰ってくるお年寄りに変に思われないようにと、望美は頻繁に場所を変えつつ、自分ちの玄関を見守った。

 帽子は却って目を惹くかとも思ったが、近所の人に顔を見られるのも具合が悪い。ショートカットの髪に生成りのカスケットをかぶり、Tシャツにジーンズ。この服装だと、男の子に見てもらえそうな気もする。ぺったんこの胸も時には役立つものだなと、望美は感心した。

 辺りに気を配りながら、望美は家の周りを遠巻きにぐるぐると回った。七月の陽射しは強い。すぐに首筋から汗が噴き出してくる。
「あーあ、何やってんだろ、私。ミステリーの読み過ぎかなぁ」
 母親が外出したとして、気づかれずに尾行できるかは微妙だ。

 自分の行動が限りなく無意味に思えて、遊びに行こうかと思い始めた時だった。通りの向こうを、駅の方から歩いて来る人影がある。
「え? あれって春木先生? こんなに早くに、どうして・・・」
 確かに今日は夕方から教わる日だが、まだ11時過ぎだ。

 望美は手近な家の生垣の陰から、息を詰めてその姿を見つめている。バッグを持った春木が門扉を開けて庭に入り、玄関先に立った。彼が呼び鈴を鳴らすとすぐにドアが開き、ちらりと由布子の白い二の腕が見え、素早く彼を中に招き入れた。

「ママったら、先生と会ってたんだ・・・」
 そうとしか解釈しようがない光景。でも、今日はたまたまかも知れない。昼食を摂りながら、教え方の相談をしているとか。
 先生は独身で自炊とかしそうにないし、母が手料理を振舞っても、それほど不自然ではない。

「そうだよ。ママと先生がなんて、あり得ないし・・・」
 だが、そう言い切れるだろうか? 真面目で清潔そうでも、先生だって一人の男。しかも、母の『女』としての変化は歴然としている。やっぱり確かめなくっちゃと、望美は自分の家に向かって歩き出した。




 彼女は先ず中庭の植え込みの陰から、窓越しにリビングを覗こうとした。だが、厚手のカーテンが閉じられていて、中の様子は見えない。こんなにいい天気なのだから、普通ならレースのカーテンだけにしておく筈なのに。望美の胸が、ぎゅっと締めつけられる。

 確かめるには、家の中に入るしかない。そう意を決して、望美は玄関に回った。ドアはロックされている。鍵を挿し込んでゆっくりと捻る。ガチャリという金属音。それが家中に響き渡ったような気がして、望美はその場に凍りついた。

 数秒間が経った。だが、幸いにも家の中からは誰の声もしない。玄関の扉を少しだけ開けてみる。普通の訪問だったら当然ある筈の春木の靴が、上がり口に揃えられていない。その事が既に、密会的な要素を裏付けているようで、望美の鼓動は速まる。

 玄関からまっすぐに伸びる廊下。奥の方の、薄暗くなっている辺りに眼を凝らしてみるが、人影はないようだ。二人はどこにいるのだろう。リビングか? それとも、ひょっとして寝室だろうか? 望美は脱いだ靴を手に持つと、すり足で廊下を奥へ進んだ。

 リビングのドアが左手に見える。全面が木製で小窓もなく、中の様子は見えない。耳を押しつけてみると、話し声がする。どうもここらしい。開けてみたい気はする。だが、気づかれるのではないかと思うと躊躇してしまう。外に出て来られて、見つかってしまうのも怖い。

 望美は一旦、二階の自分の部屋に行くことにした。音を立てないように気をつけて階段を上り、部屋に入る。靴をベッドの下に隠して、これからどうしようかと考えた。やっぱり二人は、昼食を一緒に食べてるだけのような気がする。そうあって欲しいと心から思う。

 しばらく悩んでから、もしも見つかったら開き直るしかないと、望美はそう腹を括った。自分の家なんだから、いちゃいけない理由はないと、自分に言い聞かせる。そうは思っても、胸が締めつけられ、次第に気分が悪くなってくる。昼時なのに、食欲をまるで感じない。

 自室のドアから外に出た。階段の途中にある踊り場で、身を乗り出して一階の様子を伺う。リビングのドアが突然開いて、春木が廊下に出てきた。素早く身を伏せたので、気づかれずに済んだようだ。彼はトイレに行き、再びリビングの中に入っていった。

 冷や汗が出た。しかし、好奇心には勝てない。一階の廊下まで下りて、素早くドアの前まで行っては、すぐに引き返して来る。それだけで、望美の心臓は破裂しそうになる。でも、見たい。リビングの中で彼らは、二人きりで何をしているのか、気になって仕方がない。

 思い切りがつかないままに、時計は午後1時を回っていた。食事だったら、とっくに終わってる筈。どう考えても変だ。ドア越しに幽かに響いて来る声は、何を言っているのか聞き取れない。焦れた望美は、思い切ってドアを開けてみることにした。




 キィ ―― 扉の蝶番が幽かに音を立てた。心臓がキュンとすくむ。
「ああっ・・・いいぃ・・・凄い! あなたのって凄くいいっ!」
 母の声だ。その響きの生々しさに、望美の心臓がきゅっと収縮する。10センチほど開けた隙間から、彼女は室内を覗き込んだ。

「ひっ・・・」
 思わず漏れそうになる驚きの声を、手で口を覆って我慢した。こんなの嘘だ! 反射的にドアをバタンと閉めそうになる腕の筋肉を、やっとの思いで静止する。音を立てたら、気づかれてしまう。

「ほら、鏡をよく見てごらん。入ってゆくのが見えるだろ」
 裸になった春木が、窓際のソファに座っていた。彼が抱き上げているのは由布子に間違いないが、その姿は望美にとって信じられないものだった。母が全裸にされて、しかも縄で縛られている。

 二階から様子を伺っている間に、望美は様々な可能性を考えた。中二ともなれば、男と女の間に何があるか位は知っている。ただ、彼女自身はまるで経験がない。同い年や上級生の何人かから告白された事はあるが、ときめくものがなくて、すべて断っていた。

 母親と家庭教師の間に、大人の関係があるのではないか? 玄関先に春木の靴がなかった時から、望美は半ばその事は覚悟していた。しかし、目の前の光景は、性体験のない少女が思い描いていた、どんなシーンよりもショッキングだった。

 二人の体の向きからすると、扉の位置は横に近い斜め前にあたる。ちょうどドア脇に置いてある観葉植物の葉陰になる事も手伝って、行為に没頭している二人は、望美の存在に気づかない。
「・・・いいっ・・・いいのぉ・・・もっと、もっと突いてぇ」

 早く助けないと! 望美が最初に考えたのが、それだった。だが、無理やりつながっているという感じが、どうもしない。首を後ろに捻り、自ら春木の唇を求めようする母の姿。望美は混乱した。縛られて男に思うようにされているのに、どうしてこんなに嬉しそうなのだろう?

 エアコンが効いた室内に比べ、廊下の空気は熱を帯びている。床にひざをついた望美の肌が、じっとりと汗ばんで来る。玄関の飾りガラスから入る光は、奥の方まではほとんど届かない。少女は薄明かりの中でひとり、母と家庭教師のまぐわいに眼を凝らした。




 望美は以前、クラスメイトの彼氏の家で、エッチな動画を見せられたことがある。高校生だというその彼が、ネットから拾って来たらしい。
「女の子ってさ、こういうの見たら、やっぱ感じるのか?」
 にやにや笑いを隠しつつ、いやらしい目つきで訊いてくる男。

 液晶モニタの中では、あさ黒い筋肉オバケのようなAV男優が、裸の女にまとわりついていた。
「感じるわけないですよ。第一、これってわざとらしくないですか?」
 相手が年上なので一応は敬語だが、ホントは口も利きたくない。

 実は望美は、まだ『感じる』というのがよくわかっていない。ただ、小学校の頃に、ふと机の角に股間を擦りつけてみたら気持ちよくて、あの感覚がそうかな、という程度の理解はある。相手に弱みを見せるのが嫌いなので、望美は敢えて突っ張った受け答えをした。

 画面では、女が後ろ手に縄で縛られていた。うつ伏せの状態から尻を高く持ち上げさせ、男は後ろから挑みかかる。
「あっ・・・ああぁっ・・・あぁん、あん」
 やや演技めいた女のあえぎ声が、男の勉強部屋に響く。

 望美ひとりで、その男の部屋に行ったわけでは無論ない。クラスで一番仲の良い絵里と、その男と付き合っている奈美子と三人でだ。
「彼がね、部屋に遊びに来いって言うんだけど、危なそうだから」
 泣きそうな表情で頼まれると、望美も絵里も嫌とは言えない。

「へぇ。望美ちゃんだっけ? 自然なセックスを知ってるの、君」
 男の不躾な態度にむっとする一方で、申し込まれた時に断りきれずに、ずるずると交際している奈美子の気の弱さにも腹が立った。
「まさか。でも、これは不潔な作り物だってわかります」

 奈美子は睨み合うふたりをおろおろと見比べ、絵里は画面を見れずにうつむいていた。結局、早々にその彼氏の家からは帰って来たのだが、陰険そうな狐顔とねちっこく絡みついて来る視線は、裸の男女が絡み合う映像とともに、ずっと望美の記憶に残った。




「ぁあん・・・はぁう・・・ぁんん・・・」
 最低男の部屋で見たエッチ動画に比べ、目の前の母親と家庭教師の姿は、遥かに生々しく淫らだ。だが、これは一方的に苛められているんじゃない。経験がない望美にも、それはわかる気がした。

 二人の息遣いが入り混じる。ぐいと持ち上げられた両ももの付け根に、春木の股間のモノが埋め込まれてゆく。
「こっちの縄はもういいだろう。解いてやろうな」
 いつも望美に勉強を教えてくれる、優しい声そのままに。

 根元まで挿し貫いた状態で、春木の両手が、由布子の太ももから首の後ろに回した縄を外してゆく。見事な手際だ。
「ほら、こっちに体を向けて、自分で腰を振ってみろよ」
 春木の腕に助けられ、彼女は対面座位の形で腰を下ろしてゆく。

 腕は後ろに縛られたままだが、脚はもう自由に動かせる。
「・・・ぁあん・・・欲しいのぉ・・・お願い・・・」
「何が欲しいんだ? 改めて入れる時は、ちゃんと言わなきゃ」
「あうぅ・・・おチ○ポを、由布子のオ、オマ○コにぶ、ぶち込んで!」

 上品な筈の母が、こんな卑猥な言葉を口にするなんて。望美は公立中学に通ってる。共学だから、悪ぶった男の子が自分の性器をどんな風に呼ぶか、女の子のアソコを何と言ってからかうかは知っている。だけど、まさか自分の母親が同じ呼び方をするとは。

 春木が反り返った自分のモノを、手で女の亀裂に押し当ててやると、待ちかねた様子で由布子が腰を沈めた。
「・・・ぁふぅ・・・ああん・・・あぉう・・・」
 男の腰に自分の意志でまたがり、脚を広げてしゃがんだ姿勢。

「・・・ママ・・・」
 上半身を縛られたまま、母の裸が淫靡に舞い踊る。望美は、その姿態から視線を外せない。思わず漏れた呟きも、嬌声にかき消される。
「・・・あぁっ・・・いいっ・・・いいのぉ・・・すっごくいいっ!」

 緩やかにウェーブした長い髪が、体の上下の動きに合わせて打ち振られる。ソファの弾力を利用して、春木も下から突き上げる。
「ねぇ、どこがいいの? 奥さん、言ってごらんよ」
「・・・ああっ・・・お、オマ○コ、由布子のオマ○コがいいのぉ・・・」

 淫語を口にする由布子の顔は、悦びに輝いている。それを見守る春木の表情は、対照的にとても穏やかだ。なんて優しい目をしてるんだろう。声も、私に勉強を教えてくれる時と変わらない ―― そのことが、パニックを起こしかけていた望美の心を静めた。

 無理強いされているのではない。由布子自身が求めている。望美には、それがわかる気がした。母方の祖母、そして幼稚園の頃に亡くなった曾祖母が厳しい躾をしたのは、話には聞いている。時代が違うのもあるだろうが、自分なら耐えられなかったと思う。

 異性との接触を許されずに育てられた自分自身を、母は嫌いではないのか? 最初にそう感じたのは、望美が幼稚園の年長組になった時だ。母方の実家では、望美をいわゆるお嬢様学校に入学させたい意向があった。しかし、由布子はそれに強く反発した。

「この子の世界を、狭めることはしたくないの。望美はお転婆で、とても利発な子だし、公立校で幅広い経験をさせます」
 いつもは控えめな母が、その時だけは譲らなかった。自分と同じ道を歩ませたくない。そう感じたのではなかったか?

 中学受験も、同じ理由から見送りになった。父親は、家の事にはほとんど口を出さない。望美の事について何か意見を言ったのは、それこそ春木を連れて来た時が初めてなくらいだ。銀縁のメガネの奥から、優しい目で妻と娘を見守ってくれている。

 そう、本人はこれでいいかも知れない。祖母や曾祖母が掛けた呪縛から自由になり、なりたかった自分を見つけ出せたのかも知れない。だけど、自分の家庭教師を相手に、自宅のリビングでそれをするなんて ── その気遣いのなさに、望美は激しい憤りを感じた。




「キスしてっ・・・あぁん・・・お願いっ・・・」
 由布子の声が、切なげなトーンを帯びてくる。それに連れて、くいくいっと捻り込むような腰の動きも、艶かしさを増してゆく。春木が上半身を少し起こして、由布子の唇を自らの唇で受け止めた。

「・・・ぅぐっ・・・ぅあぁ・・・んぐぅ・・・」
 太ももが激しくぶつかり合う。その淫らな音が響く中で、濃厚なディープキスが始まった。望美は、もう目を逸らしたかった。だが、できない。憑かれたように、二人の交わりに見入ってしまう。

 激しい動きに飛び散る汗と、艶かしいあえぎ声。男と女のリアルな交わり。動悸が速くなり、呼吸が乱れる。キスはおろか、男子と手もつないだことのない望美にとって、実母と家庭教師の性行為は、激しい衝撃を与えた。これが現実だとは、どうしても思えない。

「奥さんの唇、美味しいよ。ご主人とは、こんな風にキスしてるの?」
 夫との関係を尋ねられ、羞恥が新たな悦びを産み落とす。
「・・・し、してないわ・・・だってあの人、淫らな女が嫌いだから」
「そうかな。して上げなよ。待ってるかも知れないよ、ホントは」

 春木の声に嘲りの色はない。むしろ、由布子の夫婦関係を案じているようにさえ聞こえる優しい口調だ。
「こんなに色っぽくて素敵な奥さんを、旦那が嫌いなわけないじゃん。ほら、もっといい声で泣いてごらん」

 女の部分を貫いて来るストロークが、更に激しさを増す。
「あっ・・・あぁん・・・いっ・・・いいのぉ・・・」
 望美の頬が、妖しく火照る。何だろう、この変な感じ。体中が熱い。心臓がどきどきする。口の中が乾いてしようがない。

 いつもはぺったんこな胸が、ブラを内側から押し上げてくるようだ。先っぽがこすれて痛い。知らず知らずのうちにTシャツの下に手がもぐり込み、ブラジャー越しに先端を探る。すぐにもどかしくなって直に触った。小さな乳首が、膨らんで来ているのがわかる。

 これが感じるということなのか? 自分も目の前の母と同じように、男を受け入れることができるのか?
 1年前から始まった月経。今はその期間じゃない筈なのに、ぬめっとした感触が股間に拡がる。もしかして、出血したのだろうか。音を立てないように気をつけて、ベルトのバックルを外す。

 ジーンズのチャックを下ろして、前をはだける。血ではなかった。おしっこか? だが、それも違った。もっと粘り気のある液体・・・。
「・・・あぅうん・・・もうっ・・・イかせて・・・お願いっ」
 切羽詰った由布子の声が、ドアの隙間から聞こえてくる。

 頭の奥が、じんじんする。望美の全身の感覚は、まるで剥き出しの神経そのもののように敏感になっていた。その反動か、思考が麻痺してしまい、はしたないと感じつつ、股間に伸びてゆく指が止まらない。目の前の二人だって、昼間からあんな淫らな事をしてる。

 尻を浮かせて、汗で肌に貼りついたジーンズを脱いだ。湿ったショーツの中心を、指がなぞる。痺れる感覚。以前に机の角に当てた時、特に気持ちよかった部分を探り当て、いじり始める。二人が愛し合う姿を見て、吐き気がするほど不潔だと感じてるのに。

 耳の奥でしきりに鳴り続ける警鐘は、毛布でくるまれた目覚まし時計のベルのように虚ろに響く。もっと気持ちよくなりたい。この絶え間ない疼きを、何とかして欲しい。狂おしいまでの欲求が、覗き見の後ろめたさと恐怖を呑み込んでゆく。

 すぐに、ショーツも邪魔になった。一瞬ためらったが、素早く脱いでしまう。薄っすらと生え初めた陰毛、そして、その下に口を開けた一本の亀裂。部屋の中の二人の姿が、ドアの隙間から見える位置に体をずらせて、思い切って脚を左右に大きく開いた。

 陰唇はまだ可愛らしい。薄桃色をした肉の合わせ目を指で探る。
「・・・ぁはん・・・ぅうっ・・・」
 我慢しても、声が出てしまう。隙間から漏れる室内の明かりが、遮るもののない少女の股間を、ほんのりと照らし出す。

 私もあんなふうに縄で縛られて、恥ずかしい部分を先生の指で広げられ、奥まで見られたい ── 淫らな妄想が、未熟な望美の体内に火をつけ、かつてない興奮を呼び覚ましてゆく。一方で春木は、由布子に対して止めを刺すべく、更に腰の動きを速めた。

「どこでイきたいんだ? ほら、言ってごらん」
 男の引き締まった下半身に、まろやかな尻肉を勢いよくぶつけながら、由布子の裸体が上下する。
「ぁあぅ・・・オ、オマ○コでイきたいの・・・ねぇっ」

 卑猥なおねだりに応えて、春木が真下からペニスを突き上げる。
「あぁ・・・もうイきそう。イっちゃう・・・オマ○コでイくっ!!」
 絶叫する由布子。その狂態に反応するかのように望美も駆け上る。
『・・・あぁん、望美も。あっ・・・ああっ・・・イ・・・イきそう・・・』

 おのれの性感の高まりを、いやらしい言葉で表現する。それが女としての更なる悦びをもたらすのだと、今は望美にもわかる。
『・・・先生・・・春木先生っ・・・ああっ・・・イクっ・・・イきます!』
 必死に声を噛み殺し、少女は生まれて初めてのアクメに身を任せた。




『ナニガ、タイセツナノ? ドウスレバ、イイノ?』
 二週間が経っても、望美にはわからない。もう夏休みだ。虚ろなままで受けたにしては、期末テストの結果はまずまず。彼女は、十四歳の少女が背負うには、余りに大きな秘密と悩みを持て余していた。

 あの姿を見た後でも、先生を好きだという気持ちは変わらない。母親に対する行為、態度、言葉遣いは確かに衝撃だった。しかし、その根底に悪意がないのは、望美には確信できる気がする。普段の態度からしても、先生が彼女を愛しているのは間違いない。

 だが、母は許せない。大嫌いだ。普段からは考えられない、あのいやらしい姿。祖母たちに封印されていた『女』を解き放った結果だろうというのは、幼いながらも同じ女としてわからなくもない。少なくとも、わかろうとしてあげたいと、望美は考える。

 彼女が一番わからないのは、母が父のことをどう考えているかだ。夫への責任と言ってもいいかも知れない。結婚していて、自分という娘もいるのに、他の男性とあんな事をするだなんて。家族の気持ちを考えたら、絶対に出来ない筈だと思う。

 父は母を心から愛している。真面目でダサくて、笑えない冗談ばかり口にする父だが、家族を、何より母のことを大事にしてるのが伝わってくる。二人で風呂に入っていた頃に、よくノロけられた。ママには内緒だよ、恥ずかしいからね、と苦笑いしていたけれど。

 カタブツ風の外見の癖に、父はかなりのロマンチストだ。望美もママのように素敵な女性になれよ ── 中学に上がってから、何度かそう言われた。照れてはいたが、普通そこまで言うかなと思う。そういう父の想いを裏切っている母を、望美はどうしても許せない。

 あの日以来、父に話そうと何度も思った。帰りが遅いので、手紙を書いて書斎の机の引き出しに入れようかとも。
 でも、できなかった。家族が壊れてしまう。父は母を決して許さず、離婚してしまうに違いない。だから、自分が何とかするんだ。でも、一体どうしたら・・・。解決策は、なかなか見つからなかった。




「いいかい。この頂点から、この辺と平行に補助線を引くと ――」
 学習机に向かっている望美の傍で、椅子に腰掛けた春木が説明を始める。
「この大きな三角形は、二等辺三角形。こことここは同位角で同じ。で、内角の和は180度だから ――」

 淀みなく続く言葉。清潔で真面目な雰囲気は、少しも変わらない。開校記念日に見た姿とは、どうしても結びつかない。麻のスーツを着てきた彼は、上着を脱いでサイドテーブルに置き、上半身は紺色のYシャツにベージュのネクタイという格好だ。

 あの日、再び制服に着替えて帰って来た望美を迎えた時も、春木の服装や態度に乱れはなかった。紅茶を運んで来たママとも、ごく普通に接していた。大人が持つ表と裏の顔を見たような気がして、恐ろしさも感じた一方で、とてもほっとした。

 すぐに夏休みに入ったのも、望美にとっては幸運だった。テニス部の練習がある日以外も図書館に通って、母親とは顔を合わさないようにした。その間に、また先生とあんな事をするのではないかとも思ったが、自分の態度の変化に気づかれる方が嫌だった。

「―― という感じで、証明完了。じゃ、何か質問はないかな?」
 柔らかなまなざしで、春木が望美を見つめている。言うなら今しかない。勇気を出して、考え続けてきたあの言葉をぶつけなきゃと、望美は自分自身の背中を押した。
「春木先生。先生は、ママのこと、本当に愛してるんですか?」

 息を吸う音が聞こえた。こわばる春木の体。眼を大きく見開き、すぐに逸らされる視線。戸惑いと後悔、いくつかの表情が交錯する。一瞬のうちに起きたこれらの変化を、望美の眼はしっかりと捉えた。その冷静さを自覚しながら、続く言葉を咽から押し出す。

「もしそうだとしても、ママは私のママなんだし、パパの奥さんだから。私、見ちゃったんです。先生とママが、昼間にリビングで・・・あの・・・は、裸で抱き合っているところ」
 春木は、問い掛けてきたままの姿勢で凍りついている。

「先生がママを好きなの、見ててわかるけど、ダメなの。パパが可愛そう過ぎる。お願い、だからママを諦めて、先生」
 鼻の奥がツンとして、涙がこみ上げてきた。冷静でいなくてはと思う。だけど、無理だ。こんなこと落ち着いて話せる訳がない。

「代わりに・・・私をあげるから。お願い、先生・・・お願い・・・」
 口に出してしまってから、愕然とする。ああ、どうして。こんな事、言う筈じゃなかったのに ―― 自分が無意識に気づくまいとしていた願いに驚きながら、望美は夢中で春木の体に抱きついた。




 お願い、家族を壊さないで! ―― 母の代わりに、自分を抱いてと口にした望美。この続きは「風を待つ渚(3)」で、お楽しみください。




このストーリーはフィクションです。登場人物・団体等はすべて架空のものです。