官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

夫婦の夜の営み(2)

― 過去に繋がる糸、真実への扉 ―



「散らかしてますが、どうぞお上がりください」
 理恵さんに導かれるままに、スリッパを履いて私は短い廊下を奥に進んだ。私の後ろに、高岡が続く。

 左右にいくつかのドアがあり、正面がリビング。木製の枠に、いくつかの種類のガラスを組み合わせた造りの扉で、一番右の部分が縦に長細く透明になっている。

 私はここに来るのが初めてなのと、今からからさりげなく聞き出すべき内容を意識して、やや緊張している自分を感じた。
「お前、ここに来た事なかったっけ?」
「ああ、今日が初めてだよ」

 リビングは割合に広い。社宅のような形式で大学が家賃の一部を負担しているらしいが、ここに二人暮らしとはかなり恵まれている。勧められるままにテーブルに着くと、高岡がビールとグラスを持って来て注いでくれた。

「じゃ、とりあえずお疲れ様ということで」
 そう言って二人でグラスを合わせ、乾いたのどに流し込む。部屋の中は程よく暖房が効いていて、キンキンに冷えたビールが本当においしい。

「すみません。お先に乾杯しちゃいました」
 ハッチの向こうから、刺身の盛り合わせと牛タン焼きの皿を持って来てくれた理恵さんに、頭を下げた。そして、足元に置いたカバンから手土産として、漬物の詰め合わせを取り出す。

「本当は家内も来たがってはいたんですが、子どもの事が気にかかるようで・・・。これ、つまらないものですけど」
「まあ、こんな気を遣っていただかなくても」
 私の硬いあいさつを、横で高岡がにやにやしながら聞いている。

「メインは水炊きにしたんですが、よかったですか?」
「はい、鍋は大好きです」
「でも、美子は、ウチの旦那は好き嫌いが激しくて困ると言ってましたよ。牡蠣は大丈夫ですか?」
「あいつ、そんなことを。子どもの手本になれって、うるさいんですよ。こちらの牡蠣は、学生の頃も生でよく食べてましたから」

 そうした型通りのやり取りが済んで、キッチンに戻ってゆく理恵さんの後ろ姿。ベージュのトレーナーに、淡いピンクのミニスカート。エプロンはもう少し濃いピンクの短い丈のもので、小柄な彼女によく似合っている。

 料理の支度も一段落して、エプロンを取った理恵さんが席に着いたところで、改めて三人で乾杯。刺身や鍋を肴にビールを飲みながら、旧友の消息や互いの近況について雑談をする。料理はどれもおいしく、話題も大いに盛り上がった。

 食事が一区切りついた頃に、高岡が妻の話題に触れて来た。
「美子さん、残念だったな。今回は来れなくて」
「まあ、親二人が揃って家を空けるのもな。あいつの実家が同じ市内で、おばあちゃんが喜んで預かってはくれるんだが、いつもという訳にもいかないし」

 妻の実家は一戸建ての二世代住宅で、義弟の家族が一緒に住んでいる。同じ年頃の従兄弟がいるので、遊びに行った子どもは退屈せずにすむようだ。

「そうか、まあ、そのうちに機会があるだろうしな」
「うん、今度は二人で来させてもらうよ」
「じゃ、腹もいっぱいになったし、あっちでもう少しウィスキーでも飲むか」




 窓際のソファに場所を移して、私と高岡はオン・ザ・ロック、理恵さんは水割りを飲みながら、雑談の続きとなった。高岡夫妻が長い三人掛けの方に座り、私ははすかいの位置ある一人用の椅子に腰掛けた。

「こういう時、子どもがいれば、写真を見せるものなんだろうがな」
「写真か。でも、そう言えば、お二人の新婚旅行の写真とか、見たことがない気がする」
「そうだったかな。理恵、アルバムを出してくれ」

 理恵さんが低いソファから腰を浮かせる時、すらりと伸びた太ももとふくらはぎが視界を横切った。生脚だった。私はどぎまぎしてしまい、思わず感じたままを口に出した。

「奥さん、本当に結婚当時のままだね。若くてびっくりした」
「一応、現役のダンサーだからな。モダンだけでなく、ジャズダンスやエアロビクスのインストラクターもしてる。活動は、地元中心らしいけどな」

 なるほど、現役なら肢体がまったく緩んでいないのも納得できる。ウエストも足首もきゅっと締まっていて、年齢を知らない相手には二十代で通るだろう。

 男もそうだが、女性の場合は特に下腹の肉づきが年齢を表すように思う。若い子は大抵すっきりとしていて、出産を契機にある程度の脂肪がつき始める。女性は「体の線が崩れる」と言うが、私は決して嫌いではない。程度にもよるが、成熟した色気を感じる。

 持って来てくれたアルバムは2冊。片方は、結婚式から新婚旅行の写真だ。私たち夫婦も出席した披露宴。長身の高岡と小柄な奥さんは、まるで『チッチとサリー』のようだ。新幹線のホームで、私たち夫婦と4人で撮った写真も載っていた。

 理恵さんの髪型は、昔も今も耳を出したショートカットで、それがとてもよく似合っている。雰囲気がボーイッシュにならないのは、少女のような整った顔立ちによるのだろう。一方の妻は写真の中でも、肩より長く髪を伸ばしている。

 あれこれと三人に共通の思い出話を交わしつつ、最初のアルバムを見終えた。続いてもう一冊を開く。こちらは、理恵さんと妻が所属していたダンスグループの舞台や楽屋、練習風景、スナップ等を撮った写真が中心だ。

「おや、美子さんの髪が短いな」
 高岡がそう口にする前に、私も気づいていた。最初の方の写真には妻の姿はなく、10ページ目過ぎで出てきた彼女は、私が見たことのないかなり短い髪型をしていた。




「ああ、それ。入った頃の彼女の髪、短かったのよ」
 私が高岡の強引な勧めで公演に行って、初めて美子をステージで見た頃には、もうセミロングにはなっていた記憶がある。

「美子って、最初はベリーショートの髪で、ひどくやせていて、でも、ダンスの基礎はきっちり身についている感じだった」
「それが、ぼくが高岡に誘われてステージを見に行く前の・・・」
「3年ちょっと前になるかしら。最初は、何か近寄りがたい感じでしたね」

 妻とは二人が出会う前の話は、あまりしていない。つき合っていた男の事を含めて、話し辛そうにしてもいたし、何を聞いても「普通だった」「特別なことはなかった」という反応だったから、こちらも敢えて触れるのを避けて来た。

「近寄りがたいって、どんな風にですか?」
「普段はぼんやりしているのに、踊りになるとスイッチが切り替わったように、凄みのあるダンスをしてたし・・・。それに、彼女の方が少し年上だったからかな」

「美子さんは、お前の他に親しかった団員はいたのか?」
 そう問いかけた高岡の方を向こうと、理恵さんが上半身をねじる。それに連れて、低いソファの上で、行儀よく揃えられた太ももがこちらを向く。思わず視線が、そこに惹きつけられてしまう。

「まあ、何人かはね。でも、特に最初の頃は、誰も声を掛けなられかったと思うわよ」
「そんなにですか・・・」
 普段の妻からはイメージしにくいが、人に知られたくない部分というか、核のようなものは普段から感じている。

「そうか? 俺は、特にそういう印象は受けなかったな。落ち着いた感じの人だなとは思ったけど」
 高岡が、場の雰囲気を変えるように明るく言った。

 理恵さんは軽くうなずくと、こちらを向き、
「公演に来られた頃には、美子もずいぶん周囲に溶け込んでましたから。あのタイミングで二人を引き合わせたのは、正解だったわ」
と、微笑んだ。

「それにしても、美子さんのダンスは、したたるようなセクシーさだったもんなぁ。こいつときたら、あの踊りを見てすぐに『俺は、あの人と結婚する』って言い出すし」

「おいおい、それじゃまるで俺が、体だけを目的に結婚したみたいだろう。人聞きの悪いこと言うなよ」
 こう言われては、私としては苦笑いするしかない。

「いやいや、間違いなくそれも大きな要素だったはずだぞ。俺は、デートのたびに電話で耳タコなくらい聞かされたよ。『あんな素敵な女性はいない』って、もうしつこいのなんの・・・」
「ああ、わかった、わかった。その節はお世話になりましたね」

 笑い声が収まるのを待って、理恵さんに質問した。
「じゃあ、あのゆったりとした官能的なダンスは、それ以前に踊っていた場所で身につけたものなんですか?」

「そうだと思うわ。美子のいたダンシング・ミューズは、独特の厳しい指導で有名なところだったんです。後から聞いたら、美子はそこに入るためだけに、あんな遠くに就職したんだって」

 説明の中で、彼女はひとつの地方都市の名前を口にした。私の自宅がある地方からだと新幹線で2時間少しかかる、城の装飾が有名な所だ。妻がそこに住んだことがあるのを、私はまるで知らなかった。

 一方で、何となく『ミューズ』という名前に聞き覚えがあるのを感じた。しかし、妻の口から聞かされたのではなく、別のどこかで聞いたか見たしたような気がする。しかも何度か続けて。

「そのダンシング何とかは、今もあるのか?」
「ううん。今はない、というより、美子はそこが消滅したから、ウチのスタジオに来たようなの」




「消滅した?」
 高岡の目が、きゅっと細められた。
「何でも、主宰者の先生が亡くなったせいで、グループそのものが立ち消えになったような話だったわ。美子は、ミューズについてあまり話したくない様子で、他から聞いたんだけど」

 わざわざその近くに住んで、直接に指導を受けていた恩師が死んだ。それはさぞショックだったろう。
「その先生は、何で死んだんだ?」
と、高岡。

「火事だったらしいわ。その先生は女性で、40歳代後半。夜中に出火して、泥酔していたのか起きてくる気配もなく、そのまま焼け死んだみたい。この辺りの事、ご存知でした?」
 最後のひと言は、私に向けられたものだ。

「いえ、そこまでは・・・」
 私はあいまいな答えを返した。夫である自分があまりに知らされてないというのも、変な印象を与えるだろう。
「で、死んだのは一人だけ?」
 口ごもる私をフォローするように、高岡の質問が続いた。

「さあ、どうかしら。私も新聞記事を見たわけじゃなくて、踊りの仲間に聞いただけだし・・・」
 そう言うと、高岡と私のグラスを手元に引き寄せて、氷とウィスキーを注いでくれた。 




 理恵さんによれば、ミューズはダンスの世界では『異端』であり、ある意味で『謎』とされていた存在だったらしい。その理由は、独自のセクシーなダンスにあった。

 ここの女性ダンサーの踊りは観客、特に男性の観客に強い性的な興奮を与えるというのだ。抜群のプロポーションでも美貌でもなく、振りも特に変ったものでもないし、それほど際どい衣装を着ているわけでもないのに。

 彼女の使った「スイッチが切り替わったような」という表現は、私が寝室で感じているのと同じだ。普段の妻は、とりわけ色気があるわけではなく、むしろ性的な事に無関心な印象なのに、火が点くと一転して淫らになる。この二つは、何か関連があるのか・・・。




「理恵さんは、今も現役なんですね。ウチのはやめちゃったけど」
 あまり、美子の過去についてばかり話すのもどうかと感じて、話題を変えた。

「ええ、私たちには子どもがいないから、時間は自由になるし。それに、この人の給料って意外に安いんですよ」
 そう言って夫を見つめる目が、いたずらっぽく笑っている。

「でも、大人のクラスの指導もするけど、主に子ども相手なんです。決して割のいい仕事じゃないから、好きじゃないとできない」
と、少し寂しげに笑った。

 つき合い始めた頃に、妻もよくそう言っていたような気がする。名を成した人は別として、大半は食ってゆくための本業が別にあるか、実家に住んでいるか、親から仕送りを受けるかしないと、踊りは続けてゆけないものらしい。

「今も、ステージで踊ってらっしゃるんですか?」
「平均すると、年2回くらい。もう、若い時のようには体は動かないけど」
「そんなこと、ないでしょう。体型、少しも変ってないですよ」
 そう言いながら、酔いも手伝ってか、無意識に根元近くまで晒された太ももに目をやってしまう。

「まあ、こういう格好をしても、それなりに似合うからな」
 かなり酔ってきたらしい高岡が、隣にいる理恵さんの脚を軽く叩いて、言葉を続ける。
「ダンスのお陰だろうな、こういう若い服装ができるのも」

「もう、やぁね。このセクハラ親父」
 理恵さんが、夫の手の甲をぎゅっとつねる。何だかんだで、ビールから始めて2時間以上飲んでいる。私も高岡も決して弱くはないが、理恵さんの方がむしろ量を飲んでいるかも知れない。

「でも、本当に変らないですよ、あの頃と」
「異性に見られているという意識が、女を美しくするって事かねぇ」
 眠そうな声で、高岡が呟く。時計を見ると10時過ぎ。普段なら宵の口だが、ピッチが速かったせいか、私もかなり酔っている自分を感じた。

「それもあるかな。美子は、ダンス続けてないんですよね」
「そう。だから、体が限りなく平らになってるんですよ」
「あー、電話で言ってやろっと」
「それだけは、ご勘弁を。私、間違いなく殺されます」

 くだけた雰囲気の中で、他愛もない話がしばらく続いた。高岡はずいぶん眠そうにしている。私は頃合いをみて尋ねた。
「トイレ、お借りできますか?」
「あ、こちらです」

 理恵さんが、先に立って案内してくれる。足取りはしっかりしたものだ。どうやら、リビングを出てすぐ右がトイレらしい。
「今夜は、あの部屋を使って下さい。ベッドは入れてあります」
と、理恵さんは左手の壁にあるドアを指し示した。

「それと、夜中に目が覚めてトイレに行きたくなったら、どうぞ気兼ねなく使って下さいね」
「はい、ありがとうございます」

 トイレから戻ってみると、高岡はソファに横になって、うたた寝をしていた。私は理恵さんに勧められるままに一番風呂に入り、あてがわれた部屋へ引き取った。時計を見ると11時前。

 普段は高岡が書斎として使っているらしい部屋、そこに置かれた折り畳み式のベッドに寝転がり、さっき聞いたことをあれこれと考えていたが、いつの間にか深い眠りに落ちていた。




 どうして目が覚めたのか、よくわからない。気がつくと、薄暗い豆電球の明かりの中で、見慣れない天井がゆるやかに回っていた。ああ、酔っているなと考える。どうして天井は、いつも時計回りしか回らないのだろう?

 直前まで見ていた夢の中で、私は妻を抱いていた。妻はデニムのミニスカをはいていた。似合わないと思っていたのに、とてもセクシーで嬉しくなった。気がつくと、スカートをまくり上げて妻と交わっているのは他の男で、私はそれを物陰から覗いているのだった。

 妻は、もうかなり感じているようだ。薄明かりの中で、ビデオで見たように腰が大きくうねる。男の顔の辺りは、よく見えない。いつの間にか、男の影は二つになっている。四つんばいにされた妻の上と下の唇に、そそり立った怒張が出し入れされる。

「ああっ・・・うぐぅ」
 悦びの声を上げ続ける妻。早く助けなくてはいけない。そう感じる一方で、その犯される姿を見て、私はたまらなく興奮していた。しかし、このままだと妻を遠くに連れて行かれてしまう。そう感じた時に、ふいと目が覚めたのだ。

 私は尿意を感じて、ゆっくりと上半身を起こした。目が覚めた原因は、これだったのだろうか。時計は午前2時。夢の中の興奮のためか、しっかり勃起していた。物音を立てないように気をつけて廊下に出ると、斜め前のトイレへと向かう。

 リビングには、床から立てる形式の電気スタンドが置いてあった。それが点いているらしく、軟らかな光がガラスの透明な部分から、廊下にもれて出している。

 トイレに入って便器に向かったが、勃ったままでは小便は出ないので、パジャマのズボンから出した状態でしばらく待つ。
「主宰者が死んだ・・・か」

 ペニスがじわじわと萎えてゆく間、私は今夜得た情報をつらつらと思い出してみた。そのダンスグループにいた間に、妻に何かがあったのは確かな気がするが、具体的にどういう事が起きたのか?

 下腹部を圧迫していたものを無事に出して、さて部屋に戻ろうとしたその時、どこかで女性の声が聞こえた気がした。夢の中で妻があげていたような淫声。それに、時おり男性の低い声が混じる。

 理恵さんと高岡なのか? 他に考えられない。垂れていたペニスが、ぐいと頭をもたげてくる。かすかにではあるが、トイレの中にまで聞こえるということは、かなり大きい声なのだろうか。私は慎重にノブを回して、再び廊下に出た。

「ああん、あん・・・いやぁ」
 声は、すぐ左手のリビングからはっきりと聞こえてくる。見ると、ドアが10cmほど開いていた。さっきは閉じていたような気がするのだが、はっきりとは覚えていない。

「ほら。あいつに聞かれたいのか? こんなにはしたなく濡らして」
「ああっ、そんなこと、言わないで・・・」
 それに続いて、クチュクチュという何かを舐めるような湿った音と、快感を押し殺しそうとしても、もれてしまうという感じのよがり声。

 のどの奥から、自分の心臓がせり上がってくるような感覚。理恵さんと高岡がリビングでしてる? 夫婦だから当然といえばそうだが、何も俺が泊まる夜にしなくても・・・。

 友人夫婦の夜の営みを盗み見る――。してはいけないことだと知りつつ、私はリビングのドアの透明な部分に、足音を忍ばせて近づいていった。




 真夜中のリビングに、私は何を見るのか? 友人が泊まるその夜にセックスをする高岡夫妻の真意とは? この続きは、「夫婦の夜の営み(3)」でお楽しみ下さい。  




このストーリーはフィクションです。 のぞき、盗撮は犯罪です。絶対に真似をしないでください。