官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

見知らぬ妻(1)

― なつかしき峠のわが家 ―



 夢のような一夜だった。あるいは、悪夢のような、と表現すべきか。高岡が達し、理恵さんがそれに合わせるように、もう一度上り詰めた時、私もまた自分の下着の中に精を放った。それは、まるで理恵さんの膣内に射精したかのように、快感の極致だった。

 物音を立てないように気をつけて、書斎に引き返す。パンツの替えを余分には持って来ていないので、昨日のを裏返して履くという、何とも汚いことになったが、他にやり様がない。土産ものを入れて来たビニール袋に包んで、バッグの中に収めた。

 精神が高ぶって、なかなか寝つけない。体が眠りを必要としているのはよくわかった。しかし、理恵さんのこと、妻のことを考えて悶々としてしまう。ようやく眠気が訪れてくれたのは、ほとんど夜明け近くだった。




「9時過ぎてるぞ。そろそろ起きろ」
 肩を揺り動かされて、目が覚めた。頭が重い。
「ああ、昨日は・・・すまん」

 簡易ベッドの上に上半身を起こして、高岡と顔を見合わせる。何ともバツが悪い。彼はもう外出できる服装に着替えて、洗面と髭剃りを済ませているようだ。さっぱりとした顔つきをしている。

「すべて俺が望んだ事だ。そして、最終的には理恵も望んだ」
 そうだ。彼女は私に見られていると知っていながら、夫のモノを受け入れて交合する姿を、自ら晒すことを選んだ。あった事を正直に言えば、それは避けることができたのに。

「理恵は、気分が悪いそうだ。会いたくないのもあるだろうがな」
 三人で朝食をとるなんて事になったら、どんな顔をしていいかわからない。正直、助かった。しかし、今後の事を考えると、気が重いのには変わりない。

「とにかく出よう。早く着替えて顔を洗えよ。話は車の中だ」
「うん、わかった」
 トイレに行く時に、気になってリビングの中をちらりと見たが、当然ながら理恵さんの姿もなく、おしおきベッドや拘束具も、きれいに片づけられていた。

 手早く身支度を整え、マンションのエントランスから外に出て、冬の空気の中を歩く。高岡が、ポケットから取り出したタバコに火をつけた。昨夜はほとんど吸っていなかったのを見ると、ヘビースモーカーではなさそうだ。ちなみに、私は若い頃にやめている。

 車が駐車場を出て、マンションから次第に離れてゆく。体を伸ばし、それまで自分がいかに緊張していたかを実感する。
「さて、これからどうするかだが・・・」
 落ち着き払った声を出せる高岡が、空恐ろしくもある。

 考えてみると、小学校の初恋以来、好きになる女の子は、いつも理恵さんのような容姿をしていた。小柄で目鼻立ちがくっきりしていて、可愛らしい。初めてステージで見た時、一番ときめいたのは、美子に対してよりも、実は理恵さんにだった。

 しかし、彼女は既に高岡の恋人。気持ちには無意識にブレーキがかかった。自分なんかを好きになってくれるはずがない、とも感じた。だからと言って、妻が理恵さんの代用品だという意味とは違う。彼女は『私のタイプ』ではなかったというだけだ。

 自分にとって理恵さんは、あの頃に憧れた美少女たちの成長した姿なのだ。どうせ振られると思って、告白すら出来なかったいくつもの憧れ。その永遠に失われたはずの機会が、もう一度巡ってきた驚きと歓び。

 昨夜は我慢できなくなった時、振り向いて高岡の顔を見たことで、何とか踏みとどまった。しかし、あのまま暴走して、夫人の膣に生でぶち込んでいても不思議はなかった。

 友人の妻を寝取ることの興奮も、もちろんある。しかしそれ以上に、女性に対する憧れと支配欲の絡み合いが、私を激しく掻き立て、同時に私の淫心を静めてもくれるのだ。




「昨日のことが芝居だと、理恵に話すのはやめたよ」
 そう言われて、思わず高岡の横顔を見た。穏やかな表情だ。
「あいつは、お前に見てもらうことを選んだんだからな。デジカメを取り返してと言えば、済むことだったのに・・・」

 やはり、高岡も同じ事に気づいていた。
「理恵が何を考えてそうしたか、はっきりとはわからん。だけど、そうしてくれた方が、俺にとっても好都合だったしな」

 時おり信号待ちで停車しながら、窓の外を風景が後ろに流れて行く。ラジオもCDも流していない室内は、言葉が切れるたびに、痛いような静寂が訪れる。

「交換条件というわけじゃない。お前を信用していないわけでもない。そこは勘違いしないでくれ。しかし、こちらだけの秘密を握られているというのは、不安な面もある」
 奴の言わんとしている事は、よくわかる。

 秘密を共有して、バランスを保つという意味でも、お互いの妻を犯し合うというのが好ましい。私自身、それを望んでいる。しかし、妄想の中でなら簡単なことが、実際に行動を起こそうとすると、厚い心理的な壁を感じてしまう。

「急ぎはしないよ。美子さんの過去は、よく調べた方がいい。と言うより、慎重に扱わないと、何か大変な事になりそうな気がする」
 それは、日常生活で美子と接している私が、最も心配し、同時に怖れていることでもある。




「このまま駅で降ろそうか? それとも、どっかで朝飯を食うか?」
 高岡がそう訊いてきた。土曜日の午前中で、道路はそれほど混んでいない。ファミレスでモーニングを食べてもいいが、人の耳を気にしながら話すのは嫌だった。

「駅に送ってくれ。帰りたい。とにかく疲れた・・・」
「わかった・・・。それと、昨日の写真だけどな、そっちにメールで送るよ。圧縮してパスワードつけて」
 理恵さんが私たちに、裸で辱められている写真。それをイメージしただけで、股間がいきり立って来る。

「くれぐれも扱いには気をつけてくれ。パソコンは、お前専用か?」
「デスクトップが自分の部屋にある。他の人間はさわらない」
「じゃあ、基本的に大丈夫だな。代わりの何かと交換できると、安心できるんだが・・・」

 どうしても、話はそこに戻って来る。すぐ思い浮かべたのは、妻とのセックスを盗撮したビデオのダイジェスト版だった。盗撮している事は、高岡にも話していない。確かにバランスは取れるが、妻の了解を得ずに見せるのには、強い抵抗を感じた。

 もともと妻に内緒で撮ったビデオだ。今さら善人ぶるつもりなどない。しかし、私自身が見て楽しむのと、無断で他人に見せるのでは、意味合いが違いすぎる。勝手な理屈だと自分でも思うが、その点に関しては妻を裏切れない。

「すまん。今はまだ、美子のそういう画像や動画は出せないよ。だから、理恵さんのその写真も貰えない」
 助手席で深々と頭を下げる。自分たちの身だけを守っているようで、実に心苦しい。

「うん、お前なら、そう言うかなという気もしてた」
 あっさりと高岡は引き下がり、言葉を継いだ。
「俺は理恵の恥かしい姿を、お前に見せることで興奮する。変態的な性愛には違いないが、そういう自分を認め、受け入れている」

「一方で、お前から美子さんの話を聞いて、彼女の何と言うか、乱れた姿を見たくなったし、正直なところ、抱きたいとも感じた。安全保障の意味だけじゃなくて、美子さんをこの手で辱めたくなった。いや、正確にはずっと前からそう思っていた」

 内容の激しさと不似合いな淡々とした口調で、彼の言葉は続く。
「魅力的だと思うぞ、ミーコさん。どんな風に感じて、どんな顔でイクのか、俺のやり方で試してみたいもんだ」
 ソフトな言い方だが、高岡は美子を犯したいとはっきり宣言した。

「で、お前はどうなんだ? 理恵をどうしたい?」
 そう問われて、すぐには答えられなかった。覚悟を決めるために、少しだけ沈黙。しかし、もとより答えはひとつだ。
「・・・俺も一緒だ。理恵さんを抱きたい」

 言葉を選びながら、しかし明確に意思表示する。
「理恵さんは、本当に素敵な人だと思う。昨日も、危うく最後までしてしまいそうだったよ。お前との約束を破ってな」
 よく耐えたと、自分でもそう感じる。

「高岡、お前には美子を見るだけでなく、抱いて、いや犯して欲しい。だが、それは、美子に俺の口からその望みを告げて、受け入れてもらった上で預けたいと思う」
「だが、もし彼女がそれを拒んだら?」

「・・・その時は・・・お前に許してもらうしかない」
 昨夜、さんざん奥さんを目と指と舌で陵辱しておきながら、自分の妻は本人の了解なしには差し出せない。何と勝手な言い草かと、私自身も感じている。




 再び気詰まりな沈黙。JRの駅は、すぐそこに近づいて来ていた。
「・・・わかった。お前の気の済むようにしろ。だが、理恵がお前に犯されるのを見たいという、俺の気持ちは変らない」
 そう言ってもらえる事で安堵しつつ、私は本音を口にする。

「俺は、お前たちのいる世界に踏み込むのが、正直言って恐い。昨日は酔っていたから、勢いで理恵さんにあんなひどい事を言った。けど、本当に許される事かどうか・・・」
 高岡の言葉に比べて、私の発言の何とひ弱なことか。

「夫婦交換は、他人に迷惑を掛けるわけじゃないからな。本人たちが望めば、あってもいい事だと俺は思う。ただ、病気と避妊に用心して、子どもに気づかれないようにしないとな」
 そう。それらに対しては、とことん慎重でなくてはならない。

「とにかく、美子さんの件は、理恵が言っていたダンス何とかにカギがありそうだ。しかし、逆算すると15・6年前のことだしな。うーん、火事については、図書館で新聞の縮刷版を調べる手もあるが、正確な時期が絞り込めないと、それも難しいか・・・」

 警察や新聞社に問い合わせれば、詳細が分かるに違いないが、世間体もあって理由説明が難しい。といって、探偵事務所に頼むのも気が進まない。彼らに火事の原因だけでなく、起きた事の全容が解明できるものだろうか? 費用も、かなりの額かかることだし。

「美子をその気にさせるのは、すまんが少し時間をくれ。昨日の今日で、方針自体がまだ決められん」
 私は、もう一度深く頭を下げる。

「そうだな。俺たちは、前からああいったプレイをしていた。だから、渡りに舟って感じで、昨夜のような展開に持ち込めた。お前たち夫婦に同じテンポを望んでも、そりゃ酷だよな」
 前を向いて運転を続ける高岡の頬に、苦笑いが浮かぶ。

「そう言ってもらえると、気が楽になる。だけど、これだけは言えるよ。他の誰でもなく、高岡に抱いて欲しいんだ。できるだけ上手く仕向けて、美子の心を開かせるようにする」
 高岡は、納得したというようにうなずいた。

「だから、今は写真を貰うわけにいかない。すまん」
「うーん、理恵に関しては、ここで畳み掛けたいんだがな。俺が仕組んだことだと最後の最後には話すにしても、お前が理恵に言ってたように、二人で会って野外でも辱めてもらいたい」

 一旦はペースを落とそうと考えていた私は、驚いた。
「あれは勢いで言った事だし、まさかホントに・・・」
「いや、お前との事を黙っていたのは、その言葉も含めて事態を受け入れたんだ。あいつも、お前からの接触を待ってるはずだ」

 車がとうとう、駅のロータリー内に入ってしまった。
「ええい、中途半端なタイミングで・・・。もう一回りしてくるか」
 高岡はハンドルを大きく右に切って、駅前の幹線道路に出て行く。更に右折して、さっき来た道の方に引き返す。

「ウチは、夫婦で1台のパソコンを使ってる。で、メアドは別々だ。お前と会って辱められる事について、自分自身に言い訳をしやすいのは、やっぱり『あの写真を知り合いに見せるぞ』という脅しだろう。どうしようもなかった、と思えるからな」

 私にも、高岡が考えていることがイメージできて来た。
「メールで、写真をいくつか送りつけよう。それで、本気だということを示して、ホテルにでも呼び出せばいい。そこから、コート一枚で外に連れ出して・・・」
 しかし、そんなに上手く事が運ぶものだろうか?

「理恵の写真を受け取ることが心苦しいと言ってくれるなら、その時だけは俺が送ってもいい。フリーのメアドを取っておいて、その受送信記録を俺たち二人で見ていれば、理恵の反応に対して一緒に対策が立てられるし」

 メールヘッダを読めば、発信元のIPアドレスとかはわかる。発信元が違うことを不審に思われる可能性があるのだが、理恵さんはそれほどパソコンに詳しくないので、大丈夫だろうのことだ。
「本当に、そこまでしてもいいのか?」

「俺は、誰でもない、お前に理恵を辱めて欲しいんだ。こんな事を頼める相手が、他にいるわけないじゃないか。最高の適任者だよ」
 その頬に笑みがこぼれた。昨日の夜以来かも知れない。
「ただし、ビデオと写真はしっかり撮ってくれよな」




 新幹線が滑るように動き出した。シートに腰を落ち着け、私は大きくため息をつく。週末の午前中、乗客はそれほど多くなく、自由席でも楽に座れた。3人掛けの通路側をリクライニングにして、キオスクで買った缶ビールを開ける。

 昨夜から今日にかけて、まるでジェットコースターに乗っているようだ。速度が上がる前の言い知れぬ不安。そして、上下左右に振り回され、視界が矢継ぎ早に変ってゆく。背中を流れ落ちる冷汗。めくるめく興奮と、落下しないかという恐怖が心臓を締めつける。

 朝っぱらからビールを飲む。普段の私なら、周囲の目が気になるところだが、とにかく少し酔ってリラックスしたい。一気に缶の半分ほどをのどに流し込み、昼飯用にと買った駅弁の帆立の煮物を軽くつまんで、やっと人心地ついた。

 理恵さんの股間の、深い草むら。その中に咲いた鮮やかなピンクの肉ひだ。濃厚な愛液の味と匂い。恥じらいに悶える表情。涙ながらに訴える声と、深い哀しみに満ちた瞳。そして、夫のペニスをせがむ時の、淫らなおねだりの言葉。

 私は上着を脱いで太ももの上に置き、むくむくと膨らんでしまったズボンの前を隠した。理恵さんは、高岡を心から愛している。二人のまぐわいの様子から、何よりもそれを強く感じた。

 列車は、いつの間にか市街地を抜けたらしい。車窓の外に、稲が刈り取られて空ろになった田んぼが続く。時折現れる鉄橋やトンネルが、その単調な風景に変化をつける。

 アルコールが回って来ると、自分の気持ちに素直になる。私は確かに、理恵さんに憧れていた。そして、その想いは彼女の恥かしい姿を見た今も変らない。しかし、彼女を犯したい、辱めたいという欲望は、以前に比べて爆発的に強くなっている。

 もちろん、妻とは比べられない。と言うより、比べることを私は怖れている。不透明な過去を持ち、私をそれほど愛してくれているとは見えない妻よりも、旦那の段取りで寝取るという奇妙な関係ではあるが、理恵さんの方が魅力的に感じる。

 それにしても、例のダンス・グループの主宰者が、火事で亡くなっているのが何となく気にかかる。妻の過去を知りたいと強く思う反面、知ってしまうと悪い事が起きそうに感じる。それが、厄災の詰まったパンドラの匣でなければよいのだが・・・。




 新幹線から地下鉄に乗り換え、最寄り駅に着いたのが午後3時前。缶ビールをそれなりに飲んでいるが、ほとんど酔えていない。妻に対してやましいという気持ちが、自宅に近づくに従って、いや増してゆく。

 どこかで時間をつぶそうかとも思った。だが、昨夜あまり寝ていないために、早くゆっくりとくつろぎたい。行く前の予定では、市内や大学近辺を散策してみようかと考えていたので、妻には帰りは夕方くらいになるだろうと言ってある。

 カギを開けて入ってみると、家には誰もいなかった。リビングのテーブルの上にメモが乗っている。それには、
「実家に行ってきます。午後7時までには帰ってきます。美子」
と書いてあった。

 子どもの事は特に書いてないが、連れて行ったのだろう。帰ってすぐに顔を合わせずに済んで、私は少しほっとした。昨夜、精液をパンツにぶちまけてしまったので、二日続けて同じ下着だ。着替えるついでに、シャワーを浴びて、全身をゴシゴシと洗った。

 髪の毛まで洗い清めると、実にさっぱりとした気分になった。冷蔵庫にあった漬物をつまみに、ビールをまた飲み始める。酔いが深まるに連れて、次第に強くなる眠気。同時に、とても楽しい気分になって来て、思わず鼻歌を口ずさむ。

「空は青く 緑の野辺 懐かしのわが窓・・・」
 特にアメリカ民謡が好きなわけではないが、この「峠の我が家」の旋律は、心がゆったりとする。やはり、わが家は安らぎの場所であって欲しい。昨晩の出来事を経験して、余計にそう感じる。

 午後6時過ぎ、ついに眠気が限界に達した。漬物とビールが腹にたまり、空腹感はそれほどない。グラスと空き缶を、キッチンの流しに持って行き、手を洗った。

 自室のドアを開け、部屋の電気を消したままで、ベッドに腰掛ける。カーテンを開けて、ぼんやりと外を眺めた。冬の日はとっぷりと暮れ落ちて、街灯や窓々の灯りがぽつぽつと光り始めている。

「美子、ごめんな」
 そう呟いてシーツの上に横たわった途端、意識が急速に薄れてゆく。理恵さんに対する自分の淫らな心が、どうしようもなく罪深いものに感じた。

 


 さわさわと、股間を這い回る指先。その感触に、次第に意識が戻ってくる。最初は、ビールによる尿意から来る錯覚かとも思った。枕から頭だけをもたげて、闇を透かして見ると、妻が私のパジャマのズボンから、ペニスを取り出してしごいている。

「ああ、お帰り。・・・突然、どうしたの?」
 事情がつかめないまま、そう声を掛けた。
「・・・こういうのは、いや?」
 暗がりの中で、妻がかすれ声で答える。そして、しっかり勃起した私の肉棒に舌を絡みつけ、唾液をまぶして来る。

「嫌じゃないけど・・・いつになく積極的だから。何かあった?」
 妻は、ベッドの上をひざ立ちで移動すると、体全体を私の上にかぶせて来た。驚いたことに全裸だった。そして、そのまま唇を重ね、自分から舌を挿し込む。

 部屋には暖房が入っていて、着衣の私には暑いくらいに感じる。
「何時だい、いま?」
 唇が離れた隙を狙って言葉を発したが、妻は答えずに股間に顔を埋めた。指と舌先によるねちっこい愛撫が再開される。

 こういう姿は、過去に1度だけ見たことがある。私が以前に趣味で書いた小説の断片を、机の上に置いていたら、妻がそれを読んだらしい。彼女はそれを現実だと勘違いして、ヒロインに嫉妬した。その時も私は寝込みを襲われ、妻の方から激しく求めて来た。

 今回は何だろう? 理恵さんが昨夜の事を知らせたのだろうか? いや、もしそうなら、妻はストレートに怒るような気がする。
「すまん、ちょっとトイレ。ビールを飲みすぎた」
 ここは一旦間合いを取って、頭と下腹をすっきりさせたい。

「・・・んもぅ・・・早くしてね。待ってるから」
「ああ、すぐだよ」
 トイレの右手が脱衣所の引き戸で、その中の壁に時計が掛けてある。針は4時40分を指していた。




 私は、勃起したものを便器にかざし、気を静めながら考えた。連続して10時間以上眠ったということか。確かに体から疲れが取れているし、眠気が薄まってみると、頭もすっきりしているのがわかる。

 用を足して、トイレのドアを閉める。そして、何気なく脱衣籠に目をやった。精液で汚れた私のトランクスは、自室の押し入れの奥に隠した。それ以外のYシャツや肌着が丸めてあるが、ゆうべ投げ込んだ時に比べて、何となくもっこりと膨らんでいる感じがする。

 私は素早く自分のをどけて、その下を見た。妻のベージュのブラウスとブラジャー、それらで包み込むようにして、見覚えのないデニムのミニスカートがあった。しかも、かなり短い。思わず手に取ると、その中から何かが、はらりと床に落ちた。

 薄手のショーツだ。しかも、濃い色のTバック。広げてみると、脇と後ろはほとんど紐に近い。前に妻が見せてくれた、レオタードの下に着けるサポーター・ショーツもTバックだったが、見せることを意識したこんな扇情的なデザインではない。

 私は、ショーツの股布の裏側に、何か白っぽいものがべったりと付着して、ごわごわの手触りになっているのに気がついた。衝動的に、鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。自信はないが、この白いのはきっと乾いた愛液なのだろう。

 妻は昨日、この下着とスカートで外出したのか? 私の心臓は、またしても高鳴り始めた。高岡の自宅では、傍観者の立場での高揚感が主だった。今度は、まさに当事者として胸が締めつけられるような息苦しさを感じる。

 自分が何を考えているのか、よくわからないままに、振り向いて私の部屋の様子を窺った。妻が出て来そうにないのを確かめてから、浴室のドアを手前に引き、中の電灯を点ける。天井で換気扇が回っている。床や浴槽に水気はない。

 妻は、一体いつ外出から帰って来たのか。メモにあった通り、夕方の7時までに帰宅して、私が熟睡している間に風呂に入ったのだろうか? そうであっても、特に不自然ではないが、ついさっき帰宅して、風呂は外で済まして来たなんて可能性はないだろうか?

 浴槽の湯は、私がシャワーを浴びた時と同じく、抜かれている。無論、妻が後から自分のために湯を張って、入浴後に栓を開けて流したのかも知れない。タオルや石けんは、私が使い終えた位置のままのようにも見えるが、気のせいかも知れない。

「・・・いったい、俺は何を疑ってるんだ」
 低い声で、独り言を呟いた。気がかりな事は多い。しかし、時間が掛かりすぎると、妻に怪しまれてしまう。考えがまとまらず、鼓動が激しいまま、自分の寝る部屋に戻るしかない。

 妻は、上半身をベッドの上に起こし、胸からひざの辺りに毛布をかけて、薄闇の中で私を待っていた。私が開けていたカーテンはそのままで、かすかに白み始めた空と隣のマンションの黒々とした影が、窓の向こうに見えていた。




 不可解かつ疑惑に満ちた妻の行動の、真意を量りかねる私。この続きは、「見知らぬ妻(2)」でお楽しみください。  




このストーリーはフィクションです。 のぞき、盗撮は犯罪です。絶対に真似をしないでください。