官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

冬の陽炎(2)

― 見知らぬ男たちの前で ―



 パーキングエリアとは言っても、ここは施設の幅がとても狭い。幹線からガードレールを隔てた外側に、F1のピットロードのような縦長のエリアが設けられているだけだ。
 進行方向に対して斜めに白線が引かれていて、利用者はそこに車を停め、その中央付近の自販機やトイレで用事が足せる。

 ブレーキを踏み、車のスピードをぐっと落とした。入り口付近で、かなり混んでいるのがわかった。導入路脇の本来は駐車スペースでない場所にも、車が連なって停まっている。普通の自動車もあれば、トラックやタンクローリーなどの大型車もいた。

 これでは、どこから見られているか分からない。駐車されている車との距離は、ほんの数メートルだ。一度は絶頂に駆け上ろうとしていた妻も、視線の恐怖を肌で感じたのだろう。硬い表情で、シートに上げていた足を下ろし、太ももをぴたりと閉じ合わせた。

 しかし、ローターは蜜壷の奥で淫らな振動を続けている。脚を閉じたことで膣の中が狭まり、振動がよりダイレクトに響く。
「あぁっ・・・お願いです・・・ぁはっ・・・スカートを下ろして・・・」
 肩を大きくあえがせ、眉根を寄せた切なげな表情で、妻が必死にそう訴えてくる。

 ミニスカの生地は硬いデニムだ。ただでさえ丈が短い上に、M字開脚の時に太ももに押し上げられ、反り返ったまま戻らない。下腹部を覆うべきショーツも、先ほど私が前布を脇に寄せたために、蜜にまみれた羞恥の源泉を隠す役には立っていない。

 妻の白い太もも。そのつけ根には、縮れ毛が黒いパンティからはみ出して淡く煙っている。明るい陽の光が、その下に息づく女の合わせ目をあらわにする。膣内の振動に合わせて、まろやかな下腹から両ももが、絶え間なく震えている。

「・・・いやっ・・・み、見られちゃう・・・お願いっ・・・」
 拘束された手を伸ばして、何とか裾を元に戻そうとする妻。しかし、長さにアソビを持たせてないために、どちらの手も届かない。車高のある大型車の運転席からは、間違いなく覗かれてしまう。

 長距離トラックは、主に仮眠を取るために停まっている筈だ。あるいは、自販機に缶コーヒーを買いに行っているか。だが、たまたま寝起きだったり、戻ってきて発車準備をしているタイミングだったら。そう考えると、私の興奮はいやが上にも高まる。

「見られたって構わないさ。こんなに綺麗なんだから」
 本心からの言葉だ。両手を縛られて悶える妻の体は、ため息が出るほど悩ましい。だからこそ、私は確かめたくなる。彼女が恥じらうその姿が、他の男たちにとってどれほど魅力的なのかを。

 斜めに引かれた線に沿って、普通車が並んで停められている辺りを低速で進んだ。妻は上半身を前に倒して、無防備な陰部を外から隠そうとする。
 私は残酷な衝動に駆られ、手元のスイッチで助手席の窓を開けてやる。初冬の肌寒い空気が、車内に吹き込んできた。

「ああっ・・・な、何をするの。止めてっ・・・窓を閉めて・・・」
 恥ずかしさにうつむいていた妻が、必死に哀願のまなざしを向けてくる。幹線を走る車の音、人の話し声。外の物音がはっきりと聞こえることが、彼女の恥じらいを更に掻き立てるようだ。

 隙間なく並べられた車たち。フロントガラスは、すべてこちら向きだ。無人の車もあれば、ドライバーがシートベルトを装着しようとしている車もある。子どもが、ひとり助手席で待っている車も。
 ドアに遮られ、外から妻の下半身は見えないとわかっていても、彼らの目の前を走ることで、倒錯的な興奮が湧き上がる。

 トイレや自動販売機のある建物の直前に、1台分の空きスペースが見つかった。だが、両脇を車に挟まれた場所に駐車して妻を色責めするのは、いくら何でも無謀だ。している事を気づかれずに済むように、適度な距離が取れる場所でなくてはならない。

「もうイキたくなんかない・・・あぁっ・・・は、早くここを出て」
 剥き出しの下腹部を見られる恐怖が、情感の高まりを一時的に打ち消していた。妻の顔面は蒼白になり、表情もこわばっている。
 しかし一方で、その呼吸は荒く、吐息は熱く悩ましい。皮膚のすぐ下で、官能の熾火がくすぶっているのが感じられる。

 気丈に振舞おうとするその姿が、可愛くて堪らない。私の胸に、愛おしさと誇らしさが満ちてくる。大型車が道の左右に並ぶ区域を過ぎると、その先は本線合流のためのランプウェイになる。ここにも車は停められているが、入り口付近よりはまばらだ。

「まあ、そう焦らないで。よし、そこなら大丈夫そうだ」
 私は、長距離便らしいトラックの前に回りこむようにして、車を路肩に寄せた。前方のスポーツカーとも、10メートル近く離れている。
「こんなの、もう嫌。ここから離れて、お願いよ・・・うぅっ!」
 ローターのつまみを、少しだけ「強」の方に捻ってみる。

「もう、少しも感じないわ。さっき言ったことは、忘れて・・・お願い」
 女としての恥じらい、そして守るべきたしなみ。それらを支えに、妻は耐えている。私は手を伸ばしてセーターをめくり上げると、キャミソールの裾から手を差し込んだ。

「こんなに乳首が尖ってるのに、感じてない訳がないだろう」
 小ぶりな乳房を掴み取り、心地よいその弾力を楽しみつつ、両手でしっかりとこね回す。セーターの前を下着ごと内向きに丸め、首のすぐ下にたくし込んで、落ちてこないように固定した。

「ああっ・・・そんな。ホントに見られちゃう・・・あぁ、いやぁ」
 妻は体を前に折って、あらわにされた乳房を隠そうとする。それに構わず乳首をつまみ、ゆっくりと揉みにじった。妻はこの愛撫に弱い。あえぎ声が漏れそうになるのを、必死で堪えているのがわかる。

「ほら、感じてきたんじゃないか。こうするともっといいだろ?」
 指の腹にたっぷりの唾液をつけ、互い違いに滑らせながら、乳頭を強く弱く揉み潰す。息遣いが荒くなってきた。官能の蕩け具合に合わせて、ローターの振動を少しずつ強くしてゆく。

「あぁっ・・・許して、あなた・・・ぅうっ・・・」
 小さなあえぎ声が、妻ののどからこぼれた。一度は静まった官能のうねりが、再び妻を飲み込もうとしている。脚を閉じているのが辛いのか、両方の太ももはいつの間にかしどけなく開き始めている。

「いやっ・・・あっ・・・あぁん・・・」
「そうだ、いい声だ。外にもしっかり聞こえてる。後ろのトラックの運転手が、何事かと確かめに来るんじゃないか?」
 妻は狂おしげに体をくねらせながら、声をかみ殺そうとする。

「ほら、ここを触って欲しかったんだよな? ここでイキたいんだろ」
 力の入らない下肢をくつろげる。妻は既に、愛液をしとどに垂れ流していた。肉の合わせ目から、可愛い肉芽が顔を出している。指の腹で軽く嬲っただけで、妻の腰がビクンと震える。

「そう、すごくいい表情だ。ホントに綺麗だよ」
 たわめた眉が艶かしい。半開きの唇と、薄紅色に上気した頬。何とか平静を装おうとする妻だが、性感の高ぶりがそれを許さない。必死で堪えようとしてもなお、切なげな声が漏れてしまう。

 パーキングエリアを出てゆく自動車が、何台かこの車の右側を通過してゆく。そちら側からだと、トラックのような車高のある車でも、妻の裸の下半身は見えない。だが、彼女はそのたびに逆方向に顔を背ける。女としての恥じらいが、私の嗜虐欲に更なる油を注ぐ。

「お、ひょっとして、あれが前の車のドライバーかな?」
 前後を警戒しつつ、妻を責めていた私は、外側のガードレール沿いを後ろから近づいてくる若いカップルを見つけた。
 まだ十代かも知れない。いかにも、これから遊びに行くという服装をして、腕を組んで歩いてくる。

「あなた、もうダメ・・・イキそうなの・・・み、見られちゃう・・・」
 車が並んだ外側を、二人は次第に近づいてくる。それを横目で見ながら、陰核に押しつけた指の動きを速くしてゆく。
「許して・・・服を直してください・・・お願い、窓を・・・うぅっ」

「いいじゃないか。きっと気づかずに通り過ぎるよ」
 そんな筈がない。自分でもわかっている。二人はこの車のすぐ脇を通って、自分たちの車に行くのだから。心臓が爆発しそうだ。妻は、更に体を深く前傾させ、両ももをピタリと閉じ合わせた。

 二人は近づいてくる。つまみに触れて、ローターを更に強くした。残り5メートル。首もとまで引き上げられている服を、一気に下ろそうとした。しかし、丸まったセーターが胸のすぐ下で止まってしまう。リアシートに置いていたコートを取り、妻の下半身に素早くかぶせた。

「見せたい場所があるんだ。夕暮れが、すっげぇいいから・・・」
 こちらの気配に気づいてか、話し声がふっと途切れた。乳房は何とか隠せた。だが、その下の腹部は露出したままだ。男の視線が、妻の白い肌に吸い寄せられてゆく気がした。

 ショートコートが覆っているのは、下腹部周辺だけ。むっちりした太ももは、そのほとんどが露出している。私はコートの下に差し入れた指先で、妻の勃起したクリトリスを優しくいじり続ける。
「・・・ううっ・・・いやっ」
 二人が通り過ぎる瞬間、彼女は小さなあえぎ声を漏らした。

 軽く達したのか。うつむいた妻の顔は、薄桃色に染まっている。
「よし。もう大丈夫。好きなだけイッてごらん」
 コートをリアシートに放り、再び妻の陰部を陽差しの下に晒す。
 前方では、女の子を助手席に乗せた男が、パーキングエリアを出てゆくトラックをやり過ごそうと、車の後ろでタイミングを計っている。

「彼にイキ顔を見てもらいがら、気をやるんだ。いいね」
 白磁の太ももを大きく割り広げ、陰核の包皮を剥き上げる。
「・・・あっ、あぁっ・・・もうっ・・・ダメなのっ・・・」
 蜜をまぶした指先で、円を描くように肉芽を刺激する。

「顔を上げて、前を見てごらん。ほら、あっちも、お前を見てる」
 妻はうつむいたまま、小さくいやいやをする。その仕草が愛らしい。
「お前のイク時の顔は、ホントに素敵だ。な、しっかり見てもらおう」
 あごを手で支え、前を向かせた。目の焦点が合っていない。あえぎ声がひっきりなしに漏れ、表情の底に陶酔が仄見える。

「いやっ・・・あぁん、でも・・・感じるぅ・・・もうイキそうなの・・・」
 充血したクリトリスを、指の腹で優しく揉み込んでやる。
「・・・あぁっ・・・はっ、恥ずかしいっ・・・イクイクっ、イっクぅっ!」
 妻は見知らぬ男の目の前で、イキ顔を晒しながら果てた。




 半ば意識を失ったかのように、妻はぐったりと助手席のシートにもたれ掛かっている。カップルの車が発進して、少し待ってから私もパーキングエリアを後にした。淫具のスイッチは既に切ったが、デニムのスカートは改めて大きく捲り上げてある。

 気をやる瞬間の表情を、当事者以外の男に視姦される。貞淑な人妻にとって、どれほどの恥辱だろうか。
 私は、理恵さんのアクメ顔を思い出した。少女のような可憐さを残した彼女が、私の指で牝獣のようによがり、ドア越しに覗かれていると知っていながら、夫である高岡とのセックスで激しく気をやった。

 今朝からの体験が強烈過ぎて、あれが二日前の出来事だとは、とても思えない。それでいて、理恵さんの膣肉の締めつけ、愛液のヌメり具合は生々しく指先に残っている。高岡が差し出した洗面器に縛られたまま放尿した時の、恥じらいの表情も鮮烈に覚えている。

 羞恥が快楽を増幅する。それは、一部の女性だけに見られる心理作用なのかも知れない。だが、少なくとも妻は、天性のものなのか、誰かに道をつけられたかはわからないが、その快感回路を持っている。そして、理恵さんも間違いなくそうだ。

 高岡が帰ってきた時、理恵さんは私に辱めを受けたことは告げずに、排泄行為とセックスを覗き見られる方を選んだ。
 あるいはそれは、夫と私の関係を気遣う気持ちからだったのかも知れない。だが、私に視姦されている時の彼女の表情には、間違いなく恍惚の光が見え隠れしていた。

 あんな可愛らしい女性が、世間的には変態とされる嗜好を隠し持っている。それはきっと、結婚後に高岡が徐々に植えつけたものに違いない。一般論として話題にしたことはあるが、彼にそうした性癖があることは、長いつき合いの中でもまるで気づかなかった。

 高岡の心の中に変態的な欲望が生まれ、理恵さんが応えた。それだけなのだろうか。彼女の中に見られる悦びが、元からあったのではないか。彼自身の言葉を借りれば、理恵さんは「注目されることに味をしめていた」のではなかったか。

 すべてのバレリーナやダンサーが、露出狂である筈がない。しかし、肉体の美しさとその動きで、観客に歓びを与えようとする姿勢は共通している。そして、そうすることが自身にとっても喜びでなくては、厳しい練習を伴う道を歩み続けようとは思わないだろう。

 初めて行ったモダンダンスの公演。そこで観た妻の踊りは、同じダンスをした他の三人の誰とも、根底から違っていた。彼女らが着けていたのは、深いスリットが入ったローブのような薄手の衣装。光の加減によっては、体の線がくっきりと浮かび上がる。

 アレンジに多少の違いはあるものの、ステップや振りは大差ない。だが、妻の動作の一つ一つには、したたるような色気と媚があふれていた。腰の動き、視線のアクセント、胸の反らせ具合、どこがとは言えないが、その違いは暴力的ですらあった。

 男性の観客はそう多くなかった。しかし、おそらくその全員が、誘われているのは自分だと感じていた筈だ。高岡もきっとそうだ。
 私はその踊りの最中に何度か、彼女が何も着ていないように感じる瞬間があった。はっとして目を凝らすと、薄物が体の周囲で形を取り戻すという、何とも奇妙な感覚。

 容姿だけを見れば、理恵さんの方が可愛い。妻も決して不美人ではないが、普段の彼女はやや地味な印象を与える。それがステージでは、別人のように大胆でセクシーになる。その劇的な変貌は、セックスで官能に火がついた時の変化に通じるものがあった。

 ただ、変わり方は舞台の方が圧倒的に大きい。公演の後で高岡に紹介された時、同じ人だとは思えなかった程だ。素顔の彼女からは、はにかみ屋で奥ゆかしい印象を受けた。そのミステリアスな二面性に惹かれたという要素も、少なからずあったように思う。




 街並みが後ろに流れてゆく。妻の呼吸が静まり、意識がはっきりして来たのを待って、私はローターのスイッチを入れた。まろやかな白い肌、黒のTバックショーツ、そして陽に当たると茶色に見える妻の陰毛。右側の車線を、車が次々と追い抜いてゆく。

「あなた、お願い・・・スカートの裾を下ろして・・・お願いだから」
 新しい涙が、その頬を伝う。しかし、私は取り合わない。妻は泣きながら運転席側の膝を立てて、かかとを尻につくまで引きつけた。陰部を見られるよりは、こちらの方がマシということだろう。

 だがそれは同時に、官能的な太ももに視線を惹きつけてしまう姿勢でもある。普通の乗用車やトラックはともかく、RV車とかだと斜め上からちょうどいい角度で覗き込める。しかも、かかとが尻肉から少しでも離れると、隙間から恥毛が覗いてしまいかねない。

 またしても、妻の情感が蕩けてゆき、吐息が切迫感を帯び始める。性具の振動だけで、女体がこれほど反応するとは思えない。
「ぅうっ・・・許して・・・これ以上されたら・・・」
 女としての羞恥心と、官能に身を委ねたいという捨て鉢な衝動。ふたつの大波の間で、妻は小舟のように弄ばれている。

「もうすぐ、料金所だな。えぇと、いくらだっけ」
 ローターのスイッチを切る。足を床に下ろさせ、コードを引っ張って蜜壷の奥から取り出したそれを、今度はクリトリスにあてがった。脇に寄せてあったショーツを元に戻して、ローターの位置を固定する。

 左手一本では骨だったが、何とかやり遂げた。再びスイッチを入れる。膣内とは違い、鋭角的な刺激が妻の敏感な突起を襲う。
「あっ・・・ああっ・・・わたし、また・・・またっ・・・」
 妻は激しく身悶えして、快感を貪欲にむさぼろうとする。

「いいぞ、イッても。この先の料金所の人に、見てもらいながらな」
 情感に潤んだ妻の瞳が、悲しげにこちらを見つめる。スカートの折り返しを戻してやり、下着が見えるか見えないかの長さに調整した。まろみを帯びた白い太ももは、付け根まであらわになっている。

 「一般」と表示された、緑色のプレートの下のゲートに向かい、ワンボックス・ワゴンの後ろにつけた。手首のタオルとネクタイが見えないように、丸めたコートでさりげなく隠す。
「これぐらいでどうだ? 気持ちよくイケそうかい?」
 妻のあえぎ具合を観察しながら、つまみを加減してやる。

「ひぃっ・・・いっ、いやぁ・・・ここでは止めて・・・お願い・・・」
 陶酔と屈辱がない交ぜになった表情で、妻が許しを請うてくる。
「声を出さずにイケば、大丈夫さ」
 妻の哀願を軽く聞き流して、運転席側の窓をいっぱいに開く。

 前の車が、料金の支払いを終えた。車を窓口の前にゆっくりと横づけすると、手にした千円札を差し出した。
「お客さん、足りませんよ」
 係員が料金表示の電光板を示す。五十歳過ぎの実直そうな男だ。

「あ、すみません。千円札、もう一枚どこにやったかな」
 私は、ズボンのポケットを手で探った。右、それから左。男は早くしろという表情で、こちらを見ていたが、大胆に露出した妻の太ももに気づいたのだろう、慌てて目をそらした。

 妻は窓の方を向いて、懸命によがり声を我慢している。そむけた首からうなじに掛けての肌が、桜色に火照っている。
「お、あったあった。お待たせしました。はい、これ」
 わざと時間を掛けて取り出した札を、相手に手渡す。男がレジに振り向いた隙に、ローターのつまみを最大にした。

「ひぃっ!」
 悲鳴がかすかに漏れた。妻の体が小さく跳ねる。釣り銭を渡すために振り向いた係員が、その様子を見とがめた。
「そちらの方は、大丈夫ですか。どこか具合でも?」
 いかにも気遣っている風だが、視線は妻の生脚を舐め回している。

 ローターの振動音は、男の耳に届いてはいないだろうか?
「いえ、ちょっと気分が悪いらしくて。少し休ませると、いいのかも知れません。この先って、サービスエリアありましたっけ?」
 妻は額に脂汗を浮かべながら、必死に声を出すまいとしている。肉感的な太ももをすり合わせる仕草が、実に艶かしい。

「この先ですか。しばらくないでしょう。どこまで行かれるのかな?」
「そうですね。まだ、かなり・・・。あ、後ろがつかえてますね。ありがとうございます、お気遣いいただいて」
 私がそう答えた時、我慢の限界を超えたのだろう、妻がひときわ激しく身悶えした。

「んぐっ・・・ぁんっ!」
 くぐもった嬌声が、今度ははっきりと聞こえた。妻はおとがいをのけ反らせ、全身をビクンビクンと震わせている。男の目が信じられないものを見たというように、大きく見開かれた。

 見知らぬ男の前で、妻は気をやった。そのイキ顔の美しさ、絶頂を告げる声の悩ましさ。この可愛い女が、私の大切な妻だ。彼女のすべてを皆に見せつけたい。世の男どもに、自慢して回りたい。私はアクセルを踏んだ。料金所を後に、車は静かに走り出した。




「また、イったんだな。どう、気持ちよかった?」
 妻は目を伏せて、荒い呼吸を繰り返している。
「あのおじさん、ローターの膨らみにも気づいてたんじゃないか? 何せ、これだけスカートが短いんだから」

 風が吹き込んでくる。窓を閉じて、次第にスピードを上げる。
「ぅうっ・・・ひどい・・・ああっ・・・どうして、こんな酷いことを・・・」
 妻があえぎつつ、そう問い掛けてきた。レンズの奥の泣き腫らした瞳から、新たな哀しみがこぼれ落ちる。

「お前を愛しているからだ。それだけじゃダメか?」
 私は、さびしげに笑った。そう、それがすべてじゃない。
「俺も最初から、こんな事がしたかった訳じゃない。ごく普通に、お前を愛していたと思うよ。でも、ずっと邪険にされ、セックスを何度も拒まれているうちに、いつかこうしてやりたいと思うようになっていた」

 理不尽な妻の態度に、私は深く傷ついていた。どうして自分は愛されないのかと、思い悩んだ。何度も、本気で別れたいと思った。
 それでも、自分たちの性行為を盗撮しなければ、妻を辱めたいという想いは、心の奥深くに眠ったままだった気がする。一連の盗撮ビデオが、私の中の狂気を確実に掘り起こしていったのだ。

 擦り切れるほど繰返し見た、妻との交合シーン。映像の中で、彼女は私の愛撫に感じてくれていた。普段のよそよそしさは消え去り、私を心から受け入れているように見えた。そのテープを見ている間だけが、妻を自分の女だと思える、唯一の時間だった。

 妻のすべてを愛したい。自分のすべてを愛して欲しい。報われないからこそ想いは募り、満たされないからこそ願望はいや増す。不当だと思う気持ちと相まって、妻への恋慕は次第に支配欲という形を取り始め、同時に強い嗜虐性を帯びていった。

 永年に渡り、愛と性の願望を堰き止めて来た、現実という名の巨大なダム。だが、高岡の家での一夜が、その壁に亀裂を入れた。
 私が夢見てきた関係を、親友である高岡は理恵さんとの間に築いていた。愛妻の恥ずかしい姿を晒し、目の前で他人に陵辱させることが、彼の望みであり愛し方だったのだ。

 現実と夢想を隔てる堅固な筈の境界が、不意に溶け去ってゆく感覚。めまいに似た浮遊感を引きずりながら、私は帰宅した。
 寝ている間に、帰ってきた妻が私に抱かれに来た。洗濯物から、妻の不倫を知った。ダムは決壊した。もしも、高岡夫妻の秘密を知らなければ、私の反応はもっと別の形になっていた気がする。

「ずっと辛かった。自分なりに精いっぱい愛して来たつもりだったけど、お前はどこか上の空で、こちらを見てくれようともしなかった」
「ぁうん・・・ごめんなさい・・・それには、わ、訳があるの・・・」
 淫具の振動は、尚も妻のクリトリスをさいなみ続けている。

「どんな訳だ? 分かるように説明してくれよ」
「ぅぐっ・・・それは・・・それは、言えない・・・ごめんなさい・・・」
 妻はいったん何かを口にしかけたが、哀しげなまなざしをこちらに向けただけで、結局は言葉を呑み込んでしまう。

「都合が悪くなると、お前はいつもそうやって黙るよな。ずっとそうだった。何も変わらない」
 体を拘束して思い通りにしてみても、妻の心は支配できない。その当たり前すぎる事実に、不覚にも涙声になってしまう。

「ずっとなのか、その男とは」
 訊くのが怖かった質問が、するりと口をついて出た。妻はうつむいて、答えようとしない。激しい怒りが、のど元に突き上げてきた。左手を伸ばし、ローターを妻の陰核に指の腹で押しつけてやる。

「あぐっ・・・もう許して・・・ああっ・・・ごめんなさい、あなた・・・」
 シートに背中を押しつけ、あごをのけ反らせて悶える妻の姿。
 愛の裏は憎しみ、憎しみの裏は愛。まるでオセロゲームのように、心もようが一手ごとに形を変える。

 力づくで服従させたところで、妻は私をもっと嫌いになるだけかもしれない。しかし、今の自分にはそれしか道がない。
 妻を裸に剥いて、本気で外に連れ出すと脅せば、不倫相手のことを話すだろうか。だが、その真実を聞く勇気が、私にはあるのか。

 妻は私だけのものだ。誰にも渡すものか。心が縛れないのなら、不倫相手以上の肉体的快楽を与え続けて、彼女が私から離れられないようにしてやる。これから向かう場所で、私はそのための強力な手段を手に入れるのだ。




 見ず知らずの男たちに見られながら、妻は何度も気をやった。私の求める「強力な手段」とは何なのか。「冬の陽炎(2)」が書き上がりました。引き続き、お楽しみください。  




このストーリーはフィクションです。 のぞき、盗撮、猥褻物陳列は犯罪です。絶対に真似をしないでください。