官能小説 家庭内盗撮の妄想

官能小説

 

冬の陽炎(3)

― 羞恥と露出のフーガ ―



 短いトンネルを通り抜けた。アスファルトの路面に、左向きの白い矢印と「出口」という文字が現れた。私はその指示に従い、ハンドルを左に切って高速道路を降りた。一般道に合流してすぐの交差点を、これも左に曲がる。

 妻も私も、この街を訪れるのが初めてではない。結婚前にここでデートしたこともある。観光名所として有名な海沿いの公園を手をつないで歩き、評判のレストランで食事をした。
 しかし、それらはまるで別人の記憶のように、現実感に欠けている。あの頃と現在、その間には大きな亀裂がある。

 料金所を通り過ぎた直後から、妻のスカートには触れていない。肉感的な生脚が、根元まで露出している。ミニスカの裾から、淫らに顔を出した黒いパンティ。恥丘のふもと辺りが、クリトリスにあてがわれたローターでぷっくりと膨らんでいる。

「ううっ・・・あなた、お願い・・・もう、こんな事・・・」
 あえぎ声の混じったすすり泣きに、低い振動音がかぶさる。窓は閉じてはいるものの、高速道路と違って信号がある。そして、停まった車のすぐ側の歩道には、たくさんの人たちが歩いている。

 私の車はごく普通のセダンだ。目立つ車種とはいえない。それでも、サングラス越しに見ていると、時おり歩行者が妻に視線を投げ掛けてゆくのがわかる。
 何かの拍子に車内を覗き込まれたら、妻の無防備な下半身は簡単に視姦されてしまう。その危うさが堪らない。

「もう少しで着く。我慢しろ」
 我ながら、ぶっきらぼうな言い方だと思う。さっきから咽が渇いて仕方がない。不倫について問い詰めても、何一つはっきりと答えようとしない妻。その態度に、私は本気で苛つき始めていた。

「いやらしい顔だな。外の奴らに、気づかれてもいいのか?」
 涙を必死で堪え、普通でいようとしている妻だが、敏感な突起への絶え間ない刺激がそれを許さない。悩ましげに眉根を寄せ、生々しいため息声を漏らし続けている。

「いやっ・・・もうやめて。ホントに見られちゃう・・・」
 妻は朦朧とした様子で、首をぐらぐらさせている。
「大丈夫さ。お前さえ、しゃんとしてれば」
 むっちりとした太ももを、執拗に撫で回してやる。妻の虚ろな視線は、私の後ろに別の男の幻影を見ているようにも感じられた。

 不倫相手のその男にも、妻はこんな色責めを受けたのだろうか。その問い掛けを、私は苦い想いとともに呑み込んだ。訊いてどうするのだ。妻が正直に答える筈がない。例え否定してくれたとしても、私は彼女の言葉を信じることはできないだろう。

 この既視感は、嫉妬の産物だと自分でも分かっている。しかし、妻が男に何をされたのか、その想像はとめどなく広がる。すぐ側にいるのに、そして体の自由を奪っているのに、少しでも目を離せば彼女がいなくなってしまいそうな恐怖が、私の心をさいなむ。

 女は嘘をつく。理恵さんにしてもそうだ。彼女も、夫である高岡を沈黙という形で欺いた。夫がちょっと外出した隙に撮られた、破廉恥な全裸写真。理恵さんは事実を打ち明けずに、それをネタに脅迫され犯される未来を、自分自身の意思で選んだ。

 愛妻である理恵さんの心と体を、完全に支配しているかに見えた高岡ですら、そういう形で裏切られてしまう。
 表裏のない女だと思っていた妻が、ずっと隠して続けていた不倫の事実。彼女にすれば、人の良い私を手玉に取ることなど、ごく簡単だったに違いない。

 妻は性行為を求めてくる私を見て、どう感じていたのだろう。純粋な嫌悪の感情か、それとも軽蔑や哀れみか。どちらにしろ、いたたまれなさに変わりはない。
 私は唇を噛んだ。サイドミラーを確認して、右側の車線に移動する。次の大きな交差点を右折したら、目的地はすぐそこだ。

 片側二車線が、交差点の手前だけ三車線になる。信号は赤だ。右折用のレーンに入る。すぐ左の車線には、既に車が並んでいる。乗用車が多いが、バスやRV車もいる。
 私はブレーキを踏み、少しずつ速度を落としていった。停車している前の車まで、まだ30メートルほど間がある。

 左にいるのは、大型の長距離トラックだ。荷台の冷凍庫の横をゆっくりと進む。車両の前端が近づいて来た。
「いやっ! どうしてここで・・・」
 私は運転席の真下で、わざと車を停めた。前方には、まだ5メートル以上の余裕がある。

「決まってるじゃないか。運転手に、お前を見てもらうためさ」
 スペースがあるのに前へ行こうとしないこの車を、ドライバーは不審に思うだろう。そして、きっと車の中を覗き込む。
「いやっ、そんなの・・・あなた、スカートを・・・」
 妻は必死で体を前に傾けて、はみ出たショーツを隠そうとする。

「そんな格好をすると、却って変に思われるぞ。普通にしてた方がいい。生じゃないんだ。下着くらい見せてやれよ」
 意地の悪い私の言葉に身を震わせながら、妻は体を伏せたままでいる。この次は座席の下を通す形でなく、背もたれの後ろで両手を括ってやろう。胸の辺りで、シートに体を縛りつけてもいい。

「俺の言う事が聞けないのか。なら、背中を見てもらうことにしよう」
 セーターを掴むと、キャミソールもろとも一気に剥き上げた。妻の白い背中が、すべてあらわになってしまう。
「いやっ。やめて。お願い!」
 妻もまさかと思っていたのだろう。反射的に体が跳ね起きた。

「いいぞ、その方がよく見てもらえる。ついでに前もだ」
 こちらも二枚一緒に、首の下まで捲くり上げた。乳房がこぼれる。
「きゃっ! あなた、何を! やだったら!」
 妻は、再び前に体を倒した。まるで振り子のようだ。

「背中の方が、まだいいか。でも、ノーブラなのが丸分かりだぞ」
 隣のドライバーは、この様子を間違いなく覗いている。その視線の感触が、私の嗜虐性に油を注ぐ。
「だけど、パンティの色くらい、教えてあげようよ。こうやってさ」
 スカートのウェスト部分から突っ込んだ指で、ショーツを引っ掛け、思い切り引っ張った。

「ほら、こっちもだ」
 反対側の脇布も、腰骨の上まで引っ張り上げる。
「こうするとローターが股に食い込んで、もっと気持ちいいだろ?」
 呵責のない言葉嬲りと、人前での羞恥責め。体を前に折り曲げた妻の口元から、哀切な嗚咽が漏れた。




 信号が青に変わった。左の車線の車が、順に発進してゆく。斜め前のセダンはスタートしたが、隣のトラックは動こうとしない。
「やっぱり見てくれてたな。お礼に、乳くらいサービスしてやれよ」
 体の下に差し込んだ手で妻の乳房を掴み、そのまま体を起こそうするが、彼女は体を硬くして必死で拒む。

 斜め後ろから、クラクションが鳴った。二度、そして三度。右折レーンは、向かいからの直進車があるため、まだ前へは進めない。
「あなた。もう止めて・・・こんなの、ひどすぎます・・・ぅうっ」
 トラックが重い腰を上げ、ゆっくりと動き出した。野太いクラクションが響く。楽しませてもらったよ、という意味だろうか。

 続いて後ろの車たちが、左の車線を走り抜けてゆく。妻は、体を伏せたままだ。トラックがなかなか発進しなかったことで、後続車の興味を惹いてしまったかも知れない。背の高いバスや他のトラックからも、妻の背中はきっと視姦されているだろう。

「お前が、素直にいう事を聞かないからだよ。だけど、こんど逆らったら、こんなものじゃ済まないからな」
 低い声で、ぼそりと呟く。信号が赤に変わり、その下に右向きの矢印が表示された。右折レーンが流れ始めた。

 交差点から数百メートル走ると、前方左手に市営の地下駐車場が見えてきた。ハンドルを切り、車を乗り入れる。
 休日のせいか、かなり混んでいた。ぐるりと一周してみたが、地下1階は満杯。地下2階、奥の角っこに開きスペースが見つかった。私は、そこに車を停めた。

「んあぅ・・・止めて・・・お願いだから、もう許してください・・・」
 訴えとともに、切なげに息を吐く。屋内に入って安心したのだろうか、その表情はさっきまでより淫らに蕩けている。
「クリトリスだけを責められるのは、やっぱり辛いよな」
 強度調節のつまみを捻り、ローターの振動をいったん止めた。

「股を開いてごらん。どれだけ濡らしたか見てやるよ」
 手に力を込め、妻の体を無理やり引き起こした。背もたれに体を押しつけ、乳首を甘噛みする。妻の頬は、薄紅色に染まっている。私は手前の太ももを掴んで、股を大きく割り広げた。

「ぁあん・・・もう、いやぁ・・・」
 抗いの声は弱々しい。女壷から溢れ出した蜜で、妻のTバックショーツはしとどに濡れている。ローターで膨らんだ部分だけが乾き始めていて、黒地に愛液の白いまだら模様が浮き出ている。

「出掛けに約束したよな。これは、汚したら脱ぐって」
 サイドの紐のように細い部分に指を掛け、ぐっと引っ張ってから離した。ゴムが腰骨の辺りに、パチンと音を立てて弾ける。
「・・・いやっ・・・それだけは、許して・・・」

 私の咽の奥から、妻に対する鈍い怒りがこみ上げてくる。
「あれもダメ、これも嫌だ。これだけは許して、ってのが多すぎるぞ」
 シートから強引に妻の尻を持ち上ると、剥がした下着を足首から抜き取った。

 転げ落ちたローターを改めて女陰の奥に挿入し、スカートのジッパーを途中まで下ろした。余ったコードを巻きつけたコントローラーを、その隙間に差し込む。セーターの裾をかぶせれば、傍目には普通にスカートを穿いているように見える筈だ。

「いいか。これから外に出るけど、逆らうんじゃないぞ。変な動きをしたら、このジッパーを下まで降ろすからな」
 そんな事をすれば、スカートは足元に落ち、ローターのコントローラーが地面に転がるだろう。妻が女としてどんなに破廉恥な姿でいたか、周囲の人たちに気づかれることになる。

 果たして自分は、そんな酷い仕打ちができるだろうか? もし実際にすれば、二人とも身の破滅だ。それを分かっていながら、私は発作的にしてしまいそうな気もする。
 事前に様々な可能性を考え、周到に準備する割に、最後の最後で衝動に身を任せてしまうようなところが私にはある。

 膣奥のローターを振動させておいてから、手首のネクタイをほどいた。タオルで保護していたにも関わらず、帯状にうっすらと赤くなっている。一転して愛おしさが突き上げてきた。手首に唇を寄せ、傷んだ皮膚に舌を這わせる。二人の視線が絡み合った。

 絶え間ない色責めを受け、幾度となくアクメを貪ったにも関わらず、妻の姿は確かな清潔感を保っている。そのまなざしには、何故かやましさの陰りは感じられない。
 不倫をしていると思ったのは、私の思い込みなのか? 一瞬そう考えたが、すべてはその事実を指し示している。

 そのまま肩を抱き寄せ、唇を奪った。舌を絡ませてゆくと、最初は弱々しく、次第に積極的に妻も応えてくる。頬を伝う銀の雫。
「・・・怖いの・・・こんな事、きっと誰かに気づかれる」
 最前から流し続けた涙の味なのだろう。ほのかに塩からいキスだ。

 背中も胸も、はだけたままだ。乳首をつまんだ。もぎ取れそうなほど勃っている。軽く揉み潰しただけで、妻の鼻息が色っぽく変わる。
「んあっ・・・んぐっ・・・んぅ・・・んあぁ・・・」
 舌が絡みついてくる。甘やかな妻の唾液が口の中に満ちる。小ぶりな乳房に手のひらを当て、乳頭を押しつぶすように揉みしだく。

 エンジン音が、真後ろから近づいてきた。この場所は通路の正面にあたる。ドライバーからは、リアガラス越しにディープキスする二人の姿が見えているに違いない。
 その視線を意識しながら、見せつけるように唇を激しく吸う。一時停止した車が左に折れ、通路の向こうに消えていった。

「あの頃のように、手をつないで歩こうよ。ほら、立って」
 口腔の甘みを存分に楽しんでからセーターを戻し、ハンカチで涙を拭いてやる。外から助手席側のドアを開け、手を取って車の外に立たせた。コートを羽織っても、大腿は半ばまで露出している。
「・・・こんな恥知らずな格好で、外にだなんて・・・許して・・・」

 ミニスカートにノーパンというだけではない。股の間には、淫らに震える性具を呑み込んでいる。
 愛する女性を守りたいという気持ちと、とことん穢したい欲望。そして、このプレイも経験済みではないかという猜疑心が、心の中で複雑に絡み合う。

 妻の澄んだ瞳を見つめていると、捨て去った筈の良識が頭をもたげてくる。まだ間に合う。まだ引き返せる ── 声が耳の奥に響く。
 しかし、答えは既に決まっている。愛と欲望の導くところへ行くしかない。それが、どこへつながる道であっても。

「ここなら、誰も知っている人なんかいない。それに、知り合いだって、お前と気づかなかったんだ。安心して、恥を晒してごらん」
 握った手のひらを通して、妻の怯えが伝わってくる。手を引いて歩き出すと、ヒールが床に当たる音が地下駐車場に木霊した。




 エレベータの前に、何人かが立っていた。家族連れの姿もあったし、若いカップルもいる。
 私は一瞬迷ったが、その向こう側に見えている非常階段を昇ることにした。静かなエレベータの中では、ローターの音に気づかれないとも限らない。

 彼らの脇を通り過ぎる時、カップルの男の方が妻の姿をちらっと見た。ニヤッと笑い、連れの女の耳元で何か囁く。
 あのオバサン、いい歳してお前と同じくらい短いの穿いてやがる。そう嘲ったのだろうか。女は化粧が濃かったが、おそらく十代。細い足がミニスカートの裾から伸びている。

 他人の趣味に文句をつけるつもりは毛頭ないが、私はスレンダーな脚線美よりも、妻のように女らしい曲線の方を艶かしく感じる。
 それに、時の経過は残酷だ。彼女が妻と同じ歳になった時、同じほど魅力的な肉体をしている保証はどこにもない。

 階段室の鉄製のドアを手前に引く。利用者は、ほとんどないに違いない。人影のない階段を、妻の手を引いて昇り始める。
「・・・あっ・・・いやっ・・・抜け落ちそう・・・」
 最初の踊り場で、彼女は下腹部を押さえてうずくまった。

「入れ方が、ちょっと浅かったかな。見せてごらん」
 妻は硬い表情で、首を小さく横に振る。それに構わず、脚を開かせようとするが、彼女は太ももをきつく閉じたままだ。
「早くしろよ。外でローターが股から落ちたら、大恥かくぞ」
 だが、なだめても好かしても、妻はうんと言わない。

 焦れた私は、スカートのジッパー部分に挟んだコントローラーのつまみを、いきなり「強」の側に回した。
「うぐっ! やめてっ・・・んあっ・・・」
 つまみを戻そうとする妻の手を掴み、後ろ手に捻る。

「言うことを聞くって、約束したよな。もし、それが出来ないなら、ここでまた縛って、素っ裸に剥いてやろうか?」
 ポケットから古ネクタイを取り出して、目の前に差し出す。妻は悲しげに視線を伏せて、私が下肢をくつろげるに任せた。

「落ちないように、奥まで入れて・・・ぐっと締めつけてごらん」
 根元まで埋め込んだ二本の指に、妻の媚肉がしっとりと吸いついてきた。重ねて促すと、膣口の辺りと子宮近くが、それぞれ別の周期でひくひくと締めつけてくる。

「後ろの穴を、締めるようにしてごらん。ほら、ぐっと力を込めて」
 女蜜にまみれた指を引き抜き、尻たぼを広げて肛門にあてがう。第二関節まで突っ込むと、肉洞も一緒にキュッとすぼまる。
「・・・いやっ・・・わ、わかりました。だから、そこは・・・あぁっ」

 アヌスを責める指のせいで、下肢に力が入らないのだろう。妻の両ひざは、されるがままに、左右に開いてゆく。
「ここを意識して締めてれば、外でも抜け落ちたりしないさ」
 指をぐりぐり回転させながら、ゆっくりと奥へ進める。

「お尻の穴は、ダメなの・・・お願いだから、やめて・・・」
 妻はそう言うが、連続アクメで陰部全体が緩んできたのか、自宅でした時よりもスムーズに根元まで埋め込むことが出来た。
 女の膣と肛門の間の肉壁は、とても薄いものだ。指の腹で探ると、振動しているローターの形までなぞれそうだ。

「ダメだ、いやだって言ってる割に、これは何だよ」
 淡い茂みの中で、クリトリスが苞から顔を覗かせている。蜜をまぶした指でピンク色に勃起した肉芽をあやしてやると、肛門の菊ひだがきゅんと締まった。

「いやぁ・・・こんなとこじゃ・・・あなた、お願いですから・・・」
「でも、感じてるじゃないか。ホントは、こういうのが好きなんだろ?」
 菊座の人差し指をゆるゆると引き抜いて、再び根元まで突き通す。次第次第に、そのストロークを長くしてゆく。

「・・・ああっ・・・こわい・・・私、怖いの・・・ぁふっ」
 尻もちをついた姿勢から、しどけなく開き切った下肢。あらわな股間の中心で、妻の陰唇はぱっくりと口を開けている。律動に合わせて指を回転させると、堪らず妻の咽からあえぎ声がこぼれる。

「クリトリスと一緒なら、ケツの穴でもイケるんだろ?」
 その官能を仕込んだのは、いったい誰だ。全身を駆け巡る嫉妬に毒された血が、下卑た責め言葉となって飛び出す。乳首も同時に舐めてやろうと、私はセーターの裾に手を掛けた。




 突然、背後でドアが開く金属的な音がした。
「お前たち、そこで何をしている!」
 低く鋭い声だ。頭にかっと血が昇り、心臓に刺すような痛みが走った。両手で、素早く妻の脚を閉じた。自分の体で妻をかばうようにしながら、声のした方を振り向く。

 開いたのは、地下1階のドアだ。男はガードマンの制服を着ていた。白髪交じりの髪の毛が、制帽の脇から覗いている。
「すみません。ちょっと連れが、腹が痛いと言うものですから」
 普通に答えたつもりが、つい声が上ずってしまう。

 斜め上から、ガードマンが階段を一段ずつ降りて来る。妻は横座りの姿勢で、スカートの端を軽く押さえてうつむいている。
 ガードマンの視線が、妻の顔から胸、太ももを忙しく往復した。私は、掛けていたサングラスを外した。顔を隠していると思われるのは、得策ではないだろう。

「それは、いけませんな。この方は、あなたの・・・」
 私の使った敬語に反応してか、ガードマンの言葉遣いがやや丁寧になった。しかし、まだ私たち、特に私の事を不審に思っているのが、その表情から読み取れる。

「家内です。買い物に来たのですが、急に痛みを訴えて」
 白々しい言い訳だと、自分でも分かっている。警備員が妻の方を見た。彼女の側に、床に投げ出されたバッグがあった。
 男の訝しげな視線に気づいたのだろう。妻は慌てて手を伸ばし、それを手元に引き寄せた。

「ほぉ、奥様ですか。これは、また・・・」
 色っぽい、そう言おうとしたのか。それとも、いやらしいとでも? 男は、妻の体を舐め回すように見やった。二人の関係を夫婦だと思っていないのが、ありありと分かる。

「念のため、そちらにもお訊きしますが、あなたはこの人と、どういうご関係ですか?」
 もしかして、レイプを疑っているのか? しかし、何故だ。そう言えば、警備員はドアを開けた瞬間に、ここに人がいると分かっていた様子だった。

「・・・は、はい・・・この人は、私の主人です」
 妻が一瞬だけを男を見つめて、すぐに目を伏せた。瞳は潤み、頬は淡い桜色だ。女壷の奥で暴れ続けるローター。男の目の前では、その振動を止めることもかなわない。

 警備員は疑わしげな表情を浮かべ、妻をじっと見つめる。
 秘部の奥深くから伝わってくる振動。受けている色責めを悟られまいと、妻は健気にも平静を装っている。
「しかし、この状況は・・・本当に、この人はご主人ですか?」
 視線を床に向けたままで、妻はもう一度うなずく。

「何をお疑いか知らないが、家内は具合が悪いんです。これから病院に連れて行きますので、失礼します」
 手を差し伸べて、妻を床から立ち上がらせた。額に脂汗をかき、足元の定まらない彼女は、本当に体調が悪そうに見える。

 ここは外部から隔離されている上に、空調設備もない。とことん静かだ。妻のコートが立てる衣擦れの音に混じって、かすかな振動音が聞こえたような気がした。
 思い過ごしだろうか。だが、警備員の訝しげな顔を見て、そうではないとわかった。妻も同時に、男の表情の変化に気がついた。

 妻の頬に、羞恥の紅が広がる。何の音であるか気づかれる前に、この場を立ち去らなくては。私は、妻の腰に腕を回した。
 震える体を抱きかかえるようにして、階段を昇り始める。気がつくと、私の膝も緊張に震えていた。ガードマンは踊り場に立ったまま、こちらをじっと見つめている。

 かなり急な階段だ。あの場所からだと、昇ってゆく妻の太ももが付け根まで見える筈だ。ひょっとすると、もう少し奥まで。
 破滅すれすれの状況であるにも関わらず、私はその事に興奮していた。割れ目から伸びたピンク色のコードが目に留まったら、この男は音の正体に思い当たり、私たちを呼び止めるに違いない。

 いっそスカートを捲くり上げ、妻のすべてを見せつけてやろうか。発作的に、そうしてしまいたくなる。濡れそぼった女陰から淫具を取り出して見せたら、この男はどんな顔をするだろう。破滅の衝動を必死で抑えつけながら、私たちは階段を昇っていった。




 やっとの思いで一階にたどり着き、ドアを開けた。建物のエントランスから通りに出ると、すぐの路地に足を踏み入れた。牝壷の奥の絶え間ない振動に、妻は立っているのがやっとという様子だ。さりげなくセーターの下に手を入れ、ローターの振動を止めた。

「とにかく、ここから離れよう。追いかけて来るかもしれない」
 私は、妻の手を引いて足早に歩き出した。路地を奥に入り、突き当りを右に折れ、しばらく行ってから左に曲がる。
「車はどうするの? 私、こんな姿で外を歩きたくない」

 スカートの中はノーパンだ。振動はしてなくても、膣の中にローターを呑み込まされている。妻がそう思う気持ちは分かる。
「もし、車に乗るところを警備員に見られてしまったら、ナンバーから身元が割れる。しばらく、外で時間を潰すしかない」
 切迫した口調でそう言って、もう一つ角を曲がる。

「でも、こんな格好じゃ、恥ずかしくって・・・」
 早足で歩きながら、妻はしきりにスカートの裾を気にしている。
「ガードマンが来たのは、監視カメラだろうな、きっと」
 低い声で呟くと、妻が気色ばんだ様子でこちらを睨んだ。

 地下1階のドアの真上に、カメラがあったのは気づいていたが、どうせダミーだと高を括っていた。見られてもいいという気もあった。
「すまん。お前が股を広げてるところ、あの男には全部見られてると思う。尻の穴に、指を根元まで入れたところも・・・」
 最後まで言い終わらないうちに、妻の平手打ちが飛んできた。

 バチンという音に、近くを歩いていた何人かがこちらを見た。
「ホントにすまない。俺が調子に乗りすぎた」
 私は妻に頭を下げ、その手首を掴んで駆け出した。周囲の好奇の目に晒されたままでいるのは、やはり耐えられない。

 妻は手を振りほどこうとしたが、ここで放したらすべてが終わる。手に力を込め、路地をまっすぐに進んだ。
「ごめん。どうかしてた。お前のことが、好きで堪らないから・・・」
 悔しさを滲ませた声で、私はそう呟いた。

 視界が開けた。路地の突き当たりの広い道沿いに、小さな公園があった。足を止めて、ポケットの中から妻のショーツを取り出す。
「実は、持ってきてたんだ。勝手に持ち出して、悪かったけど」
 ベージュ色の地味な形のものだ。妻はひったくるようにそれを受け取ると、素早くバッグに収めた。

「そこのトイレで、穿いてきなよ。ここで待ってるから」
 妻は泣いていた。私は、無言で非難のまなざしを受け止める。
 ありがとう ── 沈黙の後に、小さな呟きが聞こえた。私も、ごめんなと小さな声で答え、もう一度頭を下げた。彼女は公園を横切って公衆トイレに近づくと、ドアの中に消えた。




 出来る限りの身支度を、整えていたのだろう。妻が出てくるまでに、10分以上掛かった。私は、近寄って来た彼女の肩を抱いた。
「あそこで、スカートを買おうよ。そのままじゃ、あんまりだから」
 公園の向こう側に、ブティックのショーウィンドウが見える。

「もちろん、俺が払うから。ホントにごめんな」
 妻の視線は険しかったが、その目にもう涙はなかった。薄めではあるが、化粧もちゃんと直している。
 だが、謝られたからといって、私の行為は簡単に許せるものではないだろう。私たちは無言で、自動ドアを通り抜けた。

 小さな店だが、センスはよさげだ。店内には、客も店員もいない。
「あのー、ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか?」
 私が声からしばらくして、一人の女性が奥から出て来た。
「はい、お待たせいたしました。いらっしゃいませ」

 私と同年輩か、少し上くらいに見える。彼女は長い髪を頭の後ろで括って、黒のスーツを品よく着こなしていた。
「すみません。この人のスカートなんですけど・・・」
「いまお召しになってるセーターに、お合わせになるんですね? なるほど。でしたら、この辺りになるかと思いますが」

 妻は最初、短いスカートをしきりに恥ずかしがっている様子だったが、女性がそれに気づかないように振舞ってくれるので、次第に気持ちが楽になってきたようだ。
 女性は妻のウェストサイズを尋ね、その好みに耳を傾けながら、色やデザインの違う何着かを選んでいった。

「じゃ、これらを試着してみてください。あ、そこの奥です」
 膝丈よりやや長めのスカートを三点ほど妻に手渡すと、女性は試着室を手で指し示した。
 当然ながら、妻はまだ怒っている。無言でスカートを受け取り、奥まった場所にあるブースのドアを開けた。




 羞恥の源泉を、監視カメラ越しに警備員に見られたことに、激しく動揺する妻。この続きは「冬の陽炎(4)」をお楽しみに。  




このストーリーはフィクションです。 のぞき、盗撮、猥褻物陳列は犯罪です。絶対に真似をしないでください。


「冬の陽炎」のH度:

達した 感じた 面白い

性別(省略可):

男性  女性

ひとこと(省略可):

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